絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 D任せる
 
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組織‐1205 D任せる BACKNEXT

仕事を命じる側が、詳細を指示して、その範囲でやらせようとすれば、人はその範囲でしか行動しません。しかし、実際には指揮命令者の想定外の事態がたくさん起こります。それに対応させるには、思い切って信じて任せることが必要です。

 このページの掲載事例→           ●120501 信頼して任せる  
 ●120502 自分たちで販促資料を作らせる  
 ●120503 社長とチャレンジ契約を結ぶ  
 ●120504 手を挙げた人にやらせる  
 ●120505 開発の意思決定を社員に任せる 
 ●120506 評価項目を自己申告させる
 ●120507 失敗を恐れない長大な時間感覚
 ●120508 社長1人で決める会社からみんなが使命感を持てる会社へ
 
【120501】 信頼して任せる  

■松下幸之助氏が電気器具の製造を始めた頃、ソケットが売れて生産が追いつかなくなり、人を雇うことにした。

■このとき同業者間で秘密にされていたソケットの材料となる練り物(アスファルトから石綿、石粉などをまぜあわせてつくる)の製法を新しく入った従業員にすべて教えた。重要なことを任された従業員は信頼されたことの期待に応えようとし、意慾的に働いたという。
■「大切なことはまず信頼することです。それで損をすることがあったとしても、信頼して騙されるのならそれで本望。それくらい徹底すれば案外人は騙さないものです」晩年、幸之助氏はそう語ったと言われる。

参考文献:「松下幸之助からの手紙」
掲載 燃えよリーダー2000/05
  
   
 
【120502】 自分たちで販促資料を作らせる   


■自動車販売会社で新車が発表される時、営業所では本社から送られてきた販促資料によって営業マン教育が行われたが、一方的に与えられる情報を聞くだけでは、営業マンはあまり熱心になれなかった。 

■そこで、新車の現物が来てから営業マンにそれを自由に触らせて自分たちで販促資料を作らせることにした。できた作品はみんなの前で発表させ、優秀作品には商品も出した。

■そこで、その後に本社からの販促資料を配ると、営業マンたちはそれと自分たちの作品を比較してチェックし、その後の展示即売会はみんないきいきと自信と誇りをもって説明に当たった。


参考文献:清水勤著「人を動かす力」(日経連広報部、1989)
掲載 燃えよリーダー2000/05
  

   
 
 【120503】 社長とチャレンジ契約を結ぶ  

■化成品メーカー、三洋化成工業には、社員が挑戦したいテーマがあれば、社長との間でチャレンジ契約を結ぶという制度がある。口に出して挑戦させることで周りの協力を得やすくし、成功の確率を高めるのが狙いである。

■挑戦したい社員はテーマとともに挑戦期間、協力者名、希望する褒美(海外旅行、夫婦同伴ディナーなど)、失敗した時のペナルティ(事務所の掃除など)を申告する。経営会議で採用と決まれば、社長との間で契約書を交わし、全体朝礼でチャレンジ宣言する。


取材先:三洋化成工業
掲載 燃えよリーダー2000/05
  
 
 
 【120504】 手を挙げた人にやらせる  

■アルバイト・パートの採用代行業、ツナグソリューションでは、社長を含む全員で会社の業績を確認。何が課題かを話し合っている。そのとき、課題解決のために1人1人は「それなら私はこの課題に挑戦する」とみんなの前で宣言する。

人はその後、半年後にどこまで達成できたかを発表、結果を自己評価する。聞いている人は、どうしてそういう評価になったのかを質問できるから、評価は自ずと妥当な線に落ち着く。それがそのまま報酬に結び付く。


取材先 ツナグソリューション
取材 2011/04/21
掲載 リーダーシップ2011/07
本文
 tsunagu.pdf   
 
 
【120505】 開発の意思決定を社員に任せる   


■電気工事用品の開発には金型製作費など何百万円もの開発投資が必要になるが、未来工業では新製品の開発には売れるか売れないかの判断、開発投資に踏み切るかどうかの判断は提案者本人に任せている。

■任せられているから、開発担当者は、何度も現場に足を運び、現場を観察し、工事業者から話を聞き、あらゆる可能性を考えて、納得できるまで完璧なものに仕上げる。アイデアの完成度が高いから、成功の確率が高くなるという。

■同社相談役で実質トップの山田昭男氏は、若い頃演劇青年だったらしく、相談役室には壁一面に全国の演劇興行ポスターが貼られている。全国の友人、知人、協力者から送られてくるもので、山田氏はこれを毎日丁寧に張り替えるのが日課だという。

■部下たちに任せられる仕事は任せればよい。管理者の仕事は部下たちの仕事を認め、励まし、やる気を盛り上げることだ。「当社では率先垂範は禁止なのだ」と山田氏は言われる。経営者や管理者が先頭に立って部下と同じことをすれば、部下は仕事を奪われたと思ってやる気をなくす。

■「報連相も禁止だ」とも言われる。上司が部下に報告・連絡・相談を求めれば、部下はその後の事は自分に責任がないと思ってしまう。管理者は報告・連絡・相談を待ち受けるのではなく、自分から部下の仕事に関心を持ち、部下をサポートする上でわからないことがあったら、聞きに行くべきだと言う。山田氏が毎日悠然と芝居のポスターを貼り替えているのは、戦術は任せるということのポーズであるようだ。

取材先 未来工業(tanbouki 004
取材 2006/01/12
掲載 ポジティブ2006/03
本文 mirai.pdf へのリンク

 
 
 【120506】評価項目を自己申告する  


■プリント基板ハンダ印刷版洗浄装置メーカー、サワーコーポレーション(大阪府枚方市)には独特の能力給制度があり、250に及ぶ能力評価項目とプラス2点〜マイナス1点の4段階の採点基準がある。

250の評価項目は「経営の日」に全社員がこの項目で評価してほしいという項目を出し合って決めた結果で、毎年新しい項目を追加し、陳腐化した項目は削除される。

250項目のうち3分の2は全社員に適用される基本的項目で、例えば、「大きな声で挨拶ができる」「電話応対ができる」「ワープロで文書作成ができる」など。残りの3分の1は、営業や技術などの職種ごとの専門項目。ただし、例えば技術者が簿記の資格を持っていて経理担当も代行するなど、専門能力以外の能力も持つ場合には、その項目についての評価も加えることができる。

■各人は毎年1回、この評価項目の中から評価してほしい項目を自己申告し、1年後に自己評価して上司に提出する。上司と澤入社長がそれを見て評価結果を修正し、本人ともう一度話し合って、双方が納得すればそれが評価結果となる。

■1点の単価は2000円。得点合計に2000円をかけたものがその人の給料である。評価項目はいくら増やしてもよく、技術者が営業関係の評価項目を選ぶなど、担当外の項目を選ぶこともできるから、プラス評価を獲得する限り、自分で自分の給料を増やすことができる。

■「一人ひとりのセールスポイントを管理者が見抜くことは不可能です。それよりも本人からセールスポイントを申告してもらって話し合いによって給料を決めた方が社員はやる気が出る」澤入精社長はこの制度のねらいをこう語っている。

取材先 サワーコーポレーション(tanbouki 048
取材 2007/08/05
掲載 ポジティブ2007/10
本文 sawacorporation.pdf へのリンク  

 
 
【120507】失敗を恐れない長大な時間感覚
 

■鍋谷バイテック(岐阜県関市)は永禄年間の創業で、長く鋳物製品をつくってきた工房である。現代では鋳物製プーリーを製作しているが、自動車や家電製造のための大ロット生産では主体的な事業運営が困難であるとして、12個単位の小ロット生産体制に切り替え、それに適した加工機の内製化をめざした。加工機の内製化は当初失敗の連続で、軌道に乗るまでに1020年かかったという。

■創業家一族で、オーナーの岡本太一社長は「そうか、失敗したか、また頑張ればいいよ」というだけで、決して叱らなかった。そして「儲かるか儲からないかではない。そうすることが自然か自然でないかを判断基準にしろ」と言い続けたという。

■一般には、会社が株主のものになり、株主の利益追求、短期利益志向が強まっている中では、失敗を恐れる傾向が強まっているが、450年の歴史を持つ同社オーナーには、長大な時間感覚があり、その中で経営の方向が決められている。

取材先 鍋屋バイテック(tanbouki 044
取材 2007/07/05
掲載 ポジティブ2007/09
本文 nabeya.pdf へのリンク

 
↑プーリー(左)と工場内製加工機
 
【120508】社長1人が決める会社からみんなが使命感を持てる会社へ   


■カルモ鋳工(神戸市)は自動車のアルミエンジン部品を試作する会社である。従来は木型の製作を型屋に依頼し、それで砂型を作り、アルミを流し込んで試作品を作っていた。

■発注者の自動部品メーカーからは、従来紙の図面が渡され、それをそのまま外注先の型屋に渡してきたが、ある時から紙の図面がデータに代わった。型屋には、それに対応する力がなく、「それなら我々がデジタル化に対応して木型作りを内製化するしかありません」と高橋直哉専務は社長に進言した。社長からその対応を任され、CAD/CAMとそれに対応した加工機を導入。試行錯誤の末に同社は型の設計から素材、加工、仕上げまで一貫して引き受けられる鋳造品メーカーとなり、その後、高橋さんは社長に就任した。

■「黙って俺についてこい」という高橋さんだったが、やがて、それでは会社は社長1人の器量以上に大きくなれないと考えるようになった。社員1人ひとりの立場になって考えると、この会社で働きながら、どれだけ成長できるか、どれだけ豊かな経験を積み上げることができるかが問われている。高橋さんはそう考えて「社員1人ひとりが使命感を持って仕事に取り組める会社にしたい」という声明文を全社員の前で読み上げた。その後、同社は次のような活動を行なっている。

■経験豊富なリーダー的立場の13人を集めて、毎週1回月曜の夜に90分間の勉強会を始めた。最初は高橋さんから社員に向けた一方通行の話だったが、やがて、他社の取り組みをビデオでみたり、リーダーシップ、やる気の高め方、コミュニケーションの大切さなどについて、著名人たちの講話のテープを聞いたりした。だが、そこで語られている内容が自分たちのレベルとかけ離れていると思うようになった。

■そこで、できることから行動に移そうと、毎朝30分、全員で5S運動を始めた。自分たちの手できれいにすることで、給料のために働くだった場が、少しだけ自分たちのものになった気がした。

■毎週月曜の勉強会は、安全衛生・設備改善・ミス防止などについてみんなで現状を確認し、問題点をみつけ、それをひとつひとつ改善していく活動に発展した。

■業界団体による同業者や異業種の工場見学会にはできるだけ積極的に社員を派遣するようになり、納入先であるメーカーの担当者が来社された時は、従来は高橋さんと営業担当が応対していたが、設計担当や現場担当も同席させるようにした。できるだけお客様を意識した仕事に仕向けるためである。

取材先 カルモ鋳工(tanbouki 064
取材 2008/03/25
掲載 ポジティブ2008/05
本文 karumochuko.pdf へのリンク 

 
↑毎朝の5S活動と毎週月曜日の勉強会
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