改善の事典  》 第13章 お客様  》 商品に関心を引き付ける
 
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お客様‐1303b 商品に関心を引き付ける BACKNEXT


お客様に買っていただくためには商品を見せて関心を引きつけることが必要です。そのためのくふうを集めました。

 このページの掲載事例→        ●1303b01 店頭で商品を見せて販売する  
 ●1303b02 広告の商品に風船をつける  
 ●130303 果物や野菜に食べごろマークを貼る  
 ●130304 フロアにランダムに靴を並べる  
 ●1303b05 値引き品コーナーをつくる  
 ●1303b06 月曜日をを「ミンチの日」にする
 ●1303b07 「お客様感謝デー」をつくる  
 ●1303b08 割引POPで窓を覆う  
 ●1303b09 系列店間でディスプレーを競う  
 ●1303b10 店員はひたすらお客様と関係のない作業をする  
 ●1303b11 調理している様子を見せる  
 ●1303b12 スポーツ用品を見やすく選びやすく並べる
 ●1303b13 本を見やすく選びやすく並べる
 ●1303b14 グリコにオマケをつける
 ●1303b15 赤玉の名前を全国に広める
 ●1303b16 味の素のマーケティング戦略
 
【1303b01】 店頭で商品を見せて販売する  

1674(延宝2)年、呉服商「越後屋」を江戸に出店した三井高利(1622-1694)は「店前(たなさき)売り」と「現金掛け値なし」による商いを始めた。

■それまでの商人たちは呉服を持って大名や旗本などの屋敷を回り、反物を広げながら商いしていたが、越後屋はその方法をとらず、店頭で反物を広げて売った。さらに「現金掛け値なし」で、定価販売、現金販売を行った。

■これによって呉服の需要は特定の富裕層から不特定多数の庶民に広がり、「芝居千両、魚河岸千両、越後屋千両」と言われるほどの繁盛ぶりを示した。

取材先 羽佐田直道氏(「小説・三井高利」著者)
取材 2020/04/13
掲載先 リーダーシップ2020/06
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki228.html

 
 


駿河町越後屋正月風景図と
「現金掛値なし」の看板
(写真提供 三井文庫)
 
【1303b02】 広告の商品に風船をつける   

■チラシ広告の商品の陳列台に風船をつけた。広告商品の位地がすぐにわかり、売り場が楽しくなった。 



取材先 ニチイ
取材 1987
掲載先 ThinkUp 1987/08
 
 
【1303b03】 果物や野菜に食べごろマークを貼る   
■季節の果物や野菜に「旬マーク」「たべごろマーク」を貼って、今が一番のたべごろであることを伝えた。



取材先 ニチイ
取材 1987
掲載先 ThinkUp 1987/08
 
 
 
【1303b04】 フロアにランダムンに靴を並べる   

■フロアにランダムに靴を並べた。これによってお客様は日常と同じ視線から靴を観察ことができ、気軽に履いてみることができるようになった。



取材先 神戸レザークロス
取材 1986/12/24
 
 
 
【1303b05】 値引き品コーナーをつくる  
■スーパーの精肉売り場で、値引きした商品があちこちにあると商品全体が古く見える。そこで、値引き品を値引き品コーナーに集め「今日は売り切って明日また新鮮な商品を並べますよ」というイメージを強調した。


取材先 ジャスコ垂水店
取材 1986/04/01
掲載先 ThinkUp 1996/06

  
 
 
 【1303b06】 月曜日を「ミンチの日」にする      

■日曜日をリッチに過ごした後の月曜日は節約メニュになる家庭が多い。そこで毎週月曜日を「ミンチの日」として子供向け節約メニューを訴えることにした。

@「月曜日はミンチの日」とPOPで表示する。
A「本日はミンチの日」とエンドレステープで連呼する。
Bコロッケ、ハンバーグ、オムレツ、ギョーザ、ロールキャベツなどの料理法を書いたショーカードを展示する。

取材先 ジャスコ垂水店
取材 1986/04/01
掲載先 ThinkUp 1986/06
 
 
【1303b07】 「お客様感謝デー」をつくる   

■郵便局が市街地から移転したため客足が遠のき、売上が低下した。

■そこで毎月1回、近くの日切地蔵の縁日を「お客様感謝デー」として、お地蔵様へのお参りのついでに郵便局に立ち寄ってもらうようにPRすることにした。

@お客様感謝デーには看板を立ててオシボリを出す。

Aお客様感謝デーに貯金していただいたお客様には粗品を進呈する。

B月2回お客様の家庭を回り、チラシを配布して「お客様感謝デー」をPRする。

取材先 東海郵政局金谷郵便局
取材 1992/03/12
掲載先 燃えよリーダー 1992/05 
 
 
 
 【1303b08】 割引POPで窓を覆う    

■割引POPで窓をふさぐくらいに覆う。割引セールが行なわれていることがすぐわかり、中を覗き込んでみたい気持ちになる。
 



参考文献:「POPアイデア演出百科」 
 
 
【130109】 系列店間でディスプレーを競う      

九州のスーパー、ハローデイの系列店では毎年ディスプレイコンテストを実施。従業員全員でお客様を引き付けるディスプレイに工夫を凝らしている。

■天井近くまで盛り上がるように赤・黄・緑の果物のカラーバリエーション、天井から下がったおびただしいは、「さあ、私たちが用意した素晴らしい商品を見てください。そして、よかったらどうぞ買っていってください」という従業員たちの思いを表現している。



取材先 ハローデイ
取材 2013/10/21
掲載先 リーダーシップ 2014/01
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki152.htm
 
   



 
【130110】 店員はひたすらお客様と関係のない作業をする    

お客様は店員のいない無人の店にほとんど関心を払わないが、珍しいものはないかと覗き込むとすぐ「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」と店員が近づくと、ほとんどのお客さまは覗くのをやめて立ち去ってしまう。

■その声かけが、買うか買わないの決断を急がせているように響くからだ。

■気に入るものがあるかどうか、探しているお客様には、「よし、これを買おう」と決めるまで、それを遮らないように自由に探してもらうことだ。

■商品を畳んだり、値札を取り付けたり、窓を拭いたり、お客さまと関係のない作業をしながら、お客様から説明を求められた時は、すぐに対応できるようにする。

■馬淵哲・南條恵著「入りやすい店売れる店」では、そうしたお客様と関係のない作業を「客寄せ踊り」、店の前に立ちはだかって「いらっしゃいませ」と連呼する声を「客追い音頭」と呼んでいる。




参考文献:馬淵哲+南條恵著「入りやすい店、売れる店」(日経ビジネス人文庫、2006)
 
 
【130111】 調理している様子をみせる     

■料理を注文してからそれが出来上がってテーブルに運ばれるまで、しばらく時間がかかる。

■あるインド料理店では、窓ガラス越しに厨房でシェフがナンをこねて焼いている姿がみえる。その動きが興味深く料理への期待感を高めている。


取材先:川西インディゴ
取材:2013/03/17
  
 
 
【1303b12】 スポーツ用品を見やすく選びやすく並べる    

@ハンガーを右手で持ち、右側からかける。これが統一されていないと右手を左手に持ち替えなければならず、正面に向けるためにひっくり返さなければならなくなる。
 
 
A色違いのものは薄いものから濃いものまで順番に並べる。色の違いが分かり選びやすくなる。  
Bポロシャツは種類別に分け、一番上だけ襟を手前に向ける。棚の陰に隠れることなく襟の形がわかりやすくなる。スパイクの底面を見せる  
Cスパイクシューズは底面の構造と形が特徴。そこで、側面と同時に底面が見えるように陳列する。



取材先 ミズノ淀屋橋店
取材 1999/12/27
掲載先 燃えよリーダー 2000/02
 
 
【1303b13】 本を見やすく選びやすく並べる   

@ゆっくりと選んでいただくために、椅子とテーブルを用意している。
  
 
A本を直接手に取って選べるように書棚は縦型。平積み棚はない。お客様のニーズに基づいて選んでいただくためPOPは貼らない。  
B目的の本を選びやすくするため、天井からは「社会科学」「人文科学」「新書」「洋書」「コンピュータ」などの大分類項目の垂れ幕が下がる。   
C書棚の側面に「ビジネス新刊」「社会問題」「海外時事」など中分類の項目を表示。また、店内の配置図が貼られていて自分の位置がわかる。    
Dタッチパネル式のコンピュータが備えられ、目的の本の在庫があるかどうか、どの書棚にあるかを調べられる。    
Eベストセラーコーナーには、ベストセラーの図書のほか新聞の書評の綴りがあり、その評判を確かめられる。


取材先 ジュンク堂大阪本店
取材 1999/12/14
掲載先 燃えよリーダー 2000/02 
 
 
 【1303b14】 グリコにオマケをつける  


■江崎利一翁(1882-1980)が、グリコーゲンの入ったキャラメル「グリコ」をつくったとき、キャラメルと言えば、森永、明治と決まっていて、グリコは当初まるで売れず、苦しい時代が続いた。

そこで、販売促進に工夫を凝らした。水飴、ミルク、チョコなど新しい味のグリコを開発/風味袋という試供品を作って婦人会で無料配布/子供の好きな絵をグリコの箱に入れる/割引券付きチラシを駅のターミナルで配布/5銭入れてグリコを1つとってもらう無人の「公徳販売機」を浜寺海水浴場に設置…。

オマケの絵カードはその後、小さな玩具のオマケに変えた。「子供には2つの天職がある。食べることと遊ぶことの2つだ」と利一が言った通り、人形、車、船、ブローチ、指輪…などの小さなおもちゃはやがて子どもたちの心を捉え、グリコはやがて菓子メーカーとして不動の地位を築いた。

 

取材協力:江崎記念館
取材:2022/06/27
探訪記:http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki252.html

 
グリコのオマケ
 
 【1303b15】 赤玉の名前を全国に広める  


■鳥井信治郎翁(1879-1962)は、日本人の嗜好に合わせて甘みを加えた葡萄酒「赤玉ポートワイン」を全国展開するために広告宣伝に力を入れた。

■「赤玉ポートワイン」のホーローの看板を2万枚製作。サイドカー付きのオートバイに乗った社員が赤玉宣伝班として全国の小売店に配って回り、店の軒先にかけさせた。

■さらに、宝塚少女歌劇団に倣って赤玉宣伝劇団を編成。東京有楽座で旗揚げ興行し、その後全国を回って興行し、「赤玉」の販売店主や愛飲者を招待した。

■さらに世間をアッと言わせるポスターを制作した。赤玉宣伝劇団のプリマドンナ、松島栄美子をモデルに、肩と胸元をはだけた女性が「赤玉」のグラスを持つ図案で、このポスターはドイツの世界ポスター品評会で1等に入選。「赤玉」の名前と商品力を全国津々浦々にまで浸透させた。

 

参考文献 杉森久英著「美酒一代」(新潮文庫、1986

掲載先 リーダーシップ 2022/12
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki255.html 
 
サントリー山崎蒸溜所ウイスキー記念館の
赤玉ポートワインポスター
 
  【1303b16】 味の素のマーケティング戦略
 


1908年、2代鈴木三郎助は、味の素の発明者、池田菊苗とともに味の素の特許権の共同保有者となった。それまで世の中になかった全く新しい製品が、人々の中に浸透していくには、様々なマーケティングの工夫が必要だった。2代三郎助は3代三郎助にそれを担当させた。

まず、味の素本社ビルの屋上に、5000個の電球を点滅させ、お椀に味の素を入れると子供がヨダレを垂らすイルミネーションで人々の注目を集めた。並行して毎月1回新聞広告を掲載。さらに、看板、電車の中吊り広告、パンフレット、ポスターなどによる広告を展開した。

■最後にチンドン屋を繰り出し、3代三郎助が印半天姿でその先頭に立って練り歩いた。チンドン屋は東京をはじめとして全国各地を練り歩き、食料品店、酒販店、乾物店を訪問。それぞれに特約店契約を締結して販売ルートを作り上げた。1910年には台湾、韓国、中国に特約店を設置。1917年にはニューヨークにも出張所を開設し、以来、味の素の需要は世界に広がったという。

取材先 味の素川崎工場、参考文献 味の素社史(1971)ほか

取材 2024/01/27

掲載 リーダーシップ2024/03

探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki262.html

 
 
味の素のチンドン屋
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