絵で見る創意くふう事典  》 第14章 社会  》 ③社会ニーズに対応して事業創出する
 
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社会‐1403 ③社会ニーズに対応して事業創出する BACKNEXT


 このページの掲載事例→                   ●140301 新しいアートのまちをつくる  
 ●140302 貴志川線を復活させる  
 ●140303 要介護者の身体的拘束とおむつを廃止する  
 ●140304 府営公園の福祉園芸・自然再生・防災に取り組む  
 ●140305 過疎と高齢化に歯止めをかけた葉っぱビジネス  
 ●140306 地域密着型ケアミックス病院をめざす 
 ●140307 福祉理美容を事業化する
 ●140308 買い物難民のための移動スーパーネットワークをつくる
 ●140309 出所者に仕事と住まいと教育を提供する
 ●140310 担い手不足の農業への挑戦者を生み出す
 ●140311 農業を計画的ビジネスに変える
 ●140312 タクシー運賃値下げ運動を展開する
 
【140301】 新しいアートのまちをつくる  

■横浜市中区黄金町の京浜急行高架下には、かつて港湾労働者に食事を提供する小規模飲食店が並び、その中には非合法の風俗営業や麻薬密売を行なう店まで含まれていた。1998年、京浜急行がそれら小規模店舗に立ち退きを要求。さらに住民と警察による違法店舗排除運動が起こり、横浜市がそれをバックアップして2005年に違法店舗一掃を実現した。

■黄金町の店舗の改修の相談を受けた神奈川大学教授で建築家の曽我部昌史さんは、そこをアーティストの活動拠点とすることを提案。それが採択され、曽我部さんと神奈川大学の学生たちはそこにアーティストの活動拠点「BankART桜荘」を建設した。

■曽我部さんらはさらに横浜市の依頼で、京浜急行高架下にアーティストの活動拠点「黄金スタジオ」を建設。完成後の2008年9~12月、この地域の負のイメージを払拭し、新しいアートの町をアピールするために、実行委員会を編成して、横浜市のバックアップを得て「黄金町バザール」というイベントを開催した。

■「黄金町バザール」では地域の商店街の店主のポートレイトを油絵で描き、それをスタジオに並べて展覧会をひらいたり、スタジオ内の電気釜で茶碗を焼いて、それで茶会を開いたり、ペーパークラフトの果物の折り紙を展示し、折り紙キットを販売するなど、新しいアーティストの町を情報発信した。

取材先 神奈川大学曽我部昌史研究室
取材 2009/01/29
掲載 ポジティブ2009/04
探訪記  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki083.html

 
↑黄金町スタジオの外観と内部
 
【140302】貴志川線を復活させる   


2004年、和歌山と当時の貴志川町(現紀の川市)貴志川を結ぶ南海電鉄貴志川線の廃線が発表された。地域の人口は増えていたが、マイカー通勤者が増え電車の利用者が年々減少していたためである。住民たちは結束して存続を求め、結局、土地と設備は行政が取得し、岡山の両備グループが100%出資して新たに和歌山電鐡㈱を設立。2006年から電車の運行を引き受けることになった。

■南海電鉄時代、毎年5億円出ていた赤字は、和歌山市と貴志川町が年間8200万円、10年間にわたって補填することが決まり、和歌山電鐡は5億円の赤字を最大8200万円にまで圧縮しなければならなくなった。

■それまでの44人の鉄道運営体制が29人にまで圧縮された。通常の鉄道会社は、運転手は運転だけ、駅長は駅務だけ、整備士は整備だけ行なうのだが、和歌山電鐡では29人全員が1人で何役もこなす。14駅のうち有人駅は2駅だけになった。

■終点の貴志川駅も無人駅となったが、駅の隣の雑貨店のおばちゃんが猫の「たま」の猫小屋を駅に置いてほしいと頼んだことがきっかけで、ガラス張りの猫小屋が作られ、そこで乗降客を出迎える「たま駅長」を写真に撮るために各地から電車に乗ってやってくる人が増えた。

■地域住民は「貴志川線の未来をつくる会」を結成。1000円の会費を払って協力を申し出た会員は6000人に上り、貴志川線の乗客を増やすために、観光ポイントの掘り起し、案内看板の設置、観光地の清掃などを行なっている。

■さらに、和歌山電鐡専務、貴志川線の未来をつくる会代表、行政の代表、学識経験者、そして和歌山電鉄社員が事務局となって、「貴志川線運営委員会」を組織。毎月1回会合を開いて、観光客を増やし沿線住民の利用を増やすための方策を話し合っており、その中から「いちご電車」「おもちゃ電車」「たま電車」などを導入、いちご狩り、三社参りスタンプラリー、名曲リサイタル、土星と春の星座を見る会…など年間50本に上るイベントを開催している。

取材先 和歌山電
取材 2009/03/10
掲載 ポジティブ2009/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki084.html

 
↑おもちゃ電車(左)と貴志川駅たま駅長室
 
【140303】 要介護者の身体的拘束とおむつを廃止する  


■重度の要介護者をケアする特別養護老人ホームでは、人手不足の中で転落や転倒を防止するために、やむを得ず利用者の身体を拘束する場合がある。しかし、相手の意思に反して自由を奪えば、気力と体力を奪い、死期を早める。トイレまで連れて行く排泄ケアを惜しんで、おむつを付けさせることも、尊厳をキズつけ、気力を萎えさせる。

■社会福祉法人こうほうえんは、2001年に身体拘束廃止を宣言。その後「介護の質向上委員会」が中心となって、おむつゼロにも取り組んできた。食事・排泄・入浴を目的と考えてはならない。目的は個別ケアであると説いた。食事・排泄・入浴を目的と考えると、拘束してでもそれを完遂しようとする。しかし、本当に求められているのは、1人ひとりと向き合い、その人の生活を尊厳に満ちたものにすることである…と全員に徹底した。

■毎年1回「法人研究発表会」が開催され、そこでは、各職場が取り組んだ改善事例が発表される。その中に、たとえば、次のような事例がある。

・大腿骨骨折した98歳の女性は毎日パッド交換していたが、彼女は「便所に行きたい」と訴え続けた。それに応えるために、介護福祉士らは食事を改善して自然排便に近付け、リクライニング車椅子から普通の車椅子に移乗できるよう姿勢を改善、最終的には自分で尿意・便意を伝えて、車椅子でトイレに行けるようになった。その結果、心身ともにおだやかになり、要介護度は5から3に低下した。

・在宅介護サービスの利用者の家族が食事づくりに疲れたときや、家族の記念日などのために、立ち寄って食事ができるように、同法人が運営する高齢者向け優良賃貸住宅内のレストランのメニューに介護食を加えた。

・保育園の園児と、同じ建物の中のデイサービス利用者や特養利用者の交流の機会をつくり、一緒に歌を歌い、楽器を演奏し、一緒に絵を描く機会をつくった。子供たちはお年寄りたちと仲良くなり、お年寄りたちも表情が柔らかく、優しくなった。

取材先 こうほうえん
取材 2014/09/16
掲載 リーダーシップ2014/11
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki162.html

 
↑利用者の話を聞く介護スタッフ、デイサービスセンターで歌を歌う、施設での食事風景
 
 【140304】 府営公園の福祉園芸・自然再生・防災に取り組む  

■公共施設の清掃作業を受託している美交工業は、2006年から大阪府営の住吉公園、2010年から府営久宝寺緑地の指定管理者になった。それまでのように公園を清掃するだけでなく、府民にとって魅力的で価値ある公園にしていく工夫が求められる。そこで、次の3つの活動に取り組んでいる。

■園芸福祉… 特別養護老人ホームに協力を求め、ホームの利用者とともに花を植え、野菜を育て、収穫した野菜で調理することで、ホーム利用者たちの癒しに役立てたことがあった。その経験をもとに、精神障害者社会適応訓練事業の受入事業所となり、福祉園芸を学んだ社員の下で、精神障害者に園芸療法を実施。癒し効果を確認し、この精神障害者は6カ月後にハローワークを通じて就職している。

■自然再生… 久宝寺緑地の「心字池」は高齢者たちの釣り堀として利用されていたが、水の循環施設がないため夏は褐色に濁った。そこで、生物学者やNPO法人の協力を得て、利用者参加型のイベントとして「どび流し」という池の浄化法を実施した。

■防災… 久宝寺緑地は、災害時には広域避難場所となり、避難者を受け入れ、負傷者救出や救急物資配送拠点としての機能も求められる。そこで、関係機関と連携を図りながら、その役割が果たせるよう、ISO22301(事業継続)の認証を取得。剪定枝を薪にして災害時の燃料として保管しておくなど、いざというときの対策立案能力、事業継続能力の向上に努めている。

取材先 美交工業
取材 2015/06/05
掲載 リーダーシップ2015/08
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki170.html


↑福祉園芸活動(左)と心字池のどび流し活動(右)
 
【140305】 過疎と高齢化に歯止めをかけた葉っぱビジネス   


■徳島県上勝町は過疎化と高齢化が進み、保護行政に頼って働く意欲を失った人が多かった。農協職員だった横石知二さんは、その人たちに畑で何を作れば売れるかの情報を提供し、働く意欲を喚起しようとした。

■日本食のつまものとして葉っぱが珍重されているのを知った横石さんは、これをビジネスにしようと考え、上勝町の葉っぱを集めて、京都や大阪の料亭や割烹店に持って行ったが、まるで相手にしてもらえなかった。

■料亭や割烹店に何度も通い、板前に教えを請い、葉っぱが季節感を先取りするものでなければならないこと、器の色や形に合わせて、様々な色・形・大きさの葉っぱが必要になることがわかり、それに合わせて、求められる品質・栽培方法・供給方法を工夫した。

■高齢者たちはいま、それぞれにパソコンを持ち、農協が発信する葉っぱの受注状況をインターネットで見て、その受注を引き受けるというとき画面上のボタンをクリックする。早くクリックしないと、他の人にとられてしまう。その緊張感が高齢者たちの老化を防止している。

■この町のこうした取り組みが若者たちの関心を呼び、インターンシップ研修生に応募し、中には移住してくる若者もいて、過疎化と高齢化に歯止めをかけつつある。

取材先 いろどり
取材 2015/09/09
掲載 リーダーシップ2015/11
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki173.html

 
↑パソコンの前で葉っぱをパックする上勝町民(左)とインターンシップ研修生募集のポスター
 
【140306】 地域密着型ケアミックス病院をめざす   


■人口減少によって健康保険財政が逼迫、高齢化と医療技術高度化によって医療コストが高騰し病院経営は困難な時代に入った。2002年、医療法人清和会長田病院の病院長に就任した木下正治さんは、そんな時代に対応するために、たまたま来院した患者だけでなく、その家族や隣近所まで含めた地域全体を顧客としてとらえ直すこと、急性期・回復期・慢性期・終末期に対応したケアミックス病院を目指すことを決め、その実現に向けて、次のような取り組みを行なった。

■地域懇談会の開催
行政・医師会・歯科医師会・薬剤師会に協力を求め、医師・看護師・介護士・行政の福祉担当者・民生委員など、地域の様々な人たちと多職種合同研修会を開催した。さらに市内各地で地域住民に集まって貰って地域懇談会を開催。高齢化が進む中、みんなで支え合うには何をしなければならないかを問題提起し、グループに分かれて意見交換した。

■ボランティアの育成と組織化
地域懇談会を重ねながらボランティア志願者を募り、志願者に地域サポーター研修を実施。修了者を「地域サポーター」に任命し、地域サポーターにより、高齢者を集めて地域サロンを開催。地域の困りごとを病院に橋渡しして貰うことにした。

■地域との連携推進
病院イベントに地域住民を招待、地域文化祭への参加、救急救命士や救急隊の搬送症例を振り返る事後研修会の開催、地域連携機関を対象に感染対策研修会の開催、市内企業の産業医を引き受け、地域住民による災害訓練の実施…など、地域との連携を推進した。

■お客様の声の収集
地域の医療・介護・福祉施設への訪問や病院内での「皆様の声カード」を通じてお客様の声を収集した。

■職員の積極参加奨励
こうした活動に職員の積極参加を促すため、全体朝礼で理念と方針の提示、お客様の声の発表、各部署や委員会の取り組み発表、経営戦略会議で中堅職員に進行役を任命、「ワイガヤ」「ワールドカフェ」などでの若い職員の意見交換…などを行った。

取材先 長田病院
取材 2018/04/20
掲載先 リーダーシップ2018/06
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki204.html

 
↑地域懇談会(左)と全体朝礼 
 
【140307】 福祉理美容を事業化する   


■大分市の理美容店、ビューティフルライフの田中晃一社長は、結婚・出産で辞めていった女性従業員に仕事に戻ってきてもらえるようにと、移動理美容車を購入。病院、高齢者施設、福祉施設などを回って、髪を切り、顔を剃り、シャンプーする事業を始めた。
■しかし、解決すべき2つの問題があった。ひとつは利用者に様々な病気を持った人がいて、理美容師に感染の危険があること。もうひとつは歩けない人や寝たきりの人のカット、顔そり、シャンプー時に移動したり姿勢を変えるとき、介助が大変だったことである。そこで、経産省の「異分野連携新事業」の認定を受け、その補助金で専門家や専門事業者と連携して問題解決を目指した。
■感染症の危険については医療機関やリスク管理対策事業者と連携。どんな危険があるか、危険防止のために何をすればいいか、理美容師にどう徹底するかをマニュアル化。これに基づいて社内教育するとともに、「日本福祉理美容安全協会」を組織。業界全体への普及啓発を進めることにした。
■利用者の介助負担を軽減するためには、メーカー、エンジニア、大学と連携して、高さと背もたれの傾きを変えられる多機能車椅子と移動式シャンプー台を開発した。理美容業界だけでなく、医療、歯科、介護業界でも利用され始めている。
■田中氏は子どもの頃から施設で理容ボランティアを行なってきた。阪神・新潟・東日本・熊本の震災では疲労困憊し、失意の中に居る人たちのために髪を切り、シャンプーした。福祉理美容の未来を開こうとするこの人の情熱は、その体験の中から生まれている。

取材先 ビューティフルライフ
取材 2016/07/0
掲載 リーダーシップ2016/09
探訪記  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki183.html

 
↑移動理美容車(左)と多機能車椅子と移動シャンプー台(右)
 
【140308】 買い物難民のための移動スーパーネットワークをつくる    


■みんなが郊外のスーパーに車で買い物に行くようになりi,商店街がシャッター通りとなってから、車に乗れない高齢者は買い物難民となった。

■この問題の解決をめざした住友達也さんは、スーパーから商品の委託を受け、軽トラックで高齢者宅を訪問して販売する次のような仕組みを作った。
①とくし丸本部を設立し地域スーパーと契約する。
②高齢者宅を訪問して回る販売パートナーを募集する。
③スーパーから委託された商品を販売パートナーが移動販売車に乗せて売りに行き、売れ残った商品は夕方スーパーに返却する。
④売り上げの一定割合を販売パートナーの収入とする。
⑤とくし丸本部は提携先スーパーから車両1台につき一定額のロイヤリティを徴収し、賛同者を増やしつつ、スーパーと販売パートナーに運営ノウハウを提供する。

移動スーパー「とくし丸」は2012年に最初の1台がスタート。2018年現在340台に足している。

取材先 とくし丸
取材 2018/10/27
掲載先 リーダーシップ2018/12
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki210.html

 
↑移動スーパー「とくし丸」(左)と訪問先募集のチラシ 
 
 【140309】 出所者に仕事と住まいと教育を提供する    


■刑務所や少年院からの仮出所者は、刑期が満了するまでの期間、保護観察処分として保護司による月2回の面談を受ける。しかし、20年間保護司として活動してきた副島勲さんは、面談だけで彼らを更生させることは不可能に近いと感じてきた。

■出所者の多くは幼少期に身に着けるべき人間関係の基本が身に着いていない。改めて身に着けさせるために、彼らにお金と住むところと教育を提供する必要がある。そのために産業廃棄物の中間処理事業を起こしたい…と副島さんは考えた。

■この構想がノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士から評価され、日本におけるユヌス・ソーシャルビジネス第1号に認定されたことで、福岡市内の中小企業、九州地方の大企業の支援を受けることができることができることになり、2004年、副島さんは(株)ヒューマンハーバーを設立した。

■同社は現在、九州地方の大企業から処理費用を受け取って産業廃棄物を引き取り、出所者がそれを分別。最終処理事業者に再委託している。分別によって再委託の費用は安くなり、さらに分別過程で回収された有価物を売却することで収益を得て、その収益によって、出所者に住まいと教育を提供している。

■教育は5人の教育専門家と心理カウンセラーが担当し、出所者1人ひとりとマンツーマンで基礎教育・人間教育・職業教育を行っている。出所者は半年か1年でここを卒業し一般社会に巣立っていく。

取材先 ヒューマンハーバー
取材 2017/08/25
掲載 リーダーシップ2017/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki196.html

 
↑ある蔵での分別作業風景(左)とそんとく塾での教育風景
 
 【140310】 担い手不足の農業への挑戦者を生み出す    


■マイファームの西辻一真社長は、農業の世界で仕事をしていきたいと考えていた。そこで300坪の農地を手に入れ、九条ネギや水菜などの京野菜を栽培。先斗町の飲食店に売りに行ったが、すでに決まった流通業者がいて入り込めなかった。しかも、たとえ先方の言い値で収穫した野菜がすべて売れたとしても、年間100万円にしかならないことがわかった。

■そこで、農地を収穫体験農園に変え、「収穫体験に参加しませんか? 野菜づくりのコツと楽しさをレクチャーします」というチラシを作って住宅地にポスティングした。子供たちに野菜づくりを体験させたいという家族連れが集まり、その人たちに小さな区画に分けた農地のオーナーになってもらった。種まき、植え付け、収穫、種摘みなどの作業を体験してもらい、日常管理は西辻さんが引き受ける。50組の参加者から年各6万円、年間300万円の収益を上げられるようになり、翌年には土地を1000坪に増やした。

■さらに、翌々年には近隣の農家を誘って体験農園事業のフランチャイジーになってもらい、西辻さんがフランチャイザーとして顧客を募集し各農園に送り込み、レクチャーの一部を引き受ける形にした。それとともにこの事業を新聞・雑誌・テレビに発信。その結果、事業への賛同者が増え、体験農園は全国110か所に広がっている。

■体験農園の応募者の中には家族連れのほか、定年退職後の高齢者など、農業を本格的にやってみたいという人も含まれていた。そこで、その人たちを対象に、農協、大学の農学部、その他の農業団体の協力を得て、「アグルイノベーション大学校」という農業スクールを開講した。

■現在のマイファームは、農業の専門家たちが集結し、「アグルイノベーション大学校」の卒業生たちがつくった農産物を販売する八百屋事業、農業法人への人材派遣事業、耕作放棄地を利用した養蜂とハチミツづくりの事業…などを展開。担い手不足の農業への挑戦者を次々生み出している。

取材先 マイファーム
取材 2018/01/22
掲載 リーダーシップ2018/03
探訪記  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki201.html へのリンク

 
↑体験農園(左)とアグリイノベーション大学校の実習風景
 
【140311】 農業を計画的ビジネスに変える   


■菓子メーカーの営業マンから青果出荷組合の仕事に転身した島崎秀樹さんは、収穫した野菜を外食産業、中食産業、カット野菜加工業者に直接売ろうと考えた。

■そのために、決まった量の野菜を、決まった価格で、決まった日に納入してくれるよう農家に頼んだが、野菜の収穫量は天候次第だとして、誰も応じてくれなかった。

■品質も、数量も、価格も、納期も、その時にならないと決まらないというのでは、業者は計画を立てられず、ビジネスは成り立たない。

■そこで、島崎さんはトップリバーという会社を立ち上げ、自ら野菜づくりを始めた。カット野菜の加工業者との間に品質・数量・価格・納期を予め設定した契約を結び、その契約に基づいて生産計画を立て、その実現のために工夫・努力を傾注した。

①天候がどうであれ、少なくともこれ位は収穫できるという量がある。平均的な収穫量の半分、或いは3分の2…、作り方のノウハウを蓄積し、最も効果的な方法を標準化し、この標準のレベルを少しずつ引き上げていくことをめざした。

②そのためにすべての農作業と結果を記録し、データベース化し、収穫の安定化に向けた改善を積み重ね、それをマニュアル化した。

③価格は種を蒔く前に決める。外食産業や中食産業にとっては、安定供給自体がメリットだから、価格は平均的な相場価格よりも高く設定できる。供給量が予めきまっていると、トラックは常に満杯で走らせることができる。

④天候不順で約束の量を確保できない時には、高騰した市場相場で購入してでも不足分を補い、必ず約束を守る。

⑤近隣農家に収穫量の一部について、数量・価格・納期を予め取り決めてトップリバーに回してもらえるように依頼した。ただし、契約農家には必ず決まった日に種を撒き、決まった日に定植してもらうことが条件。それに協力して貰える農家が少しずつ増えていった。

■農業を計画的なビジネスに変えてきたトップリバーには、教えを乞う若者たちを研修生として受け入れ、3~6年をかけてノウハウを教え、そこを卒業した人たちが各地で組織農業を展開し始めている。

取材先 トップリバー
取材 2012/12/23
掲載 リーダーシップ2013/02
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki141.html

 
トップリバーの農場で
 
【140312】 タクシー運賃値下げ運動を展開する   


■タクシーにはかつて同一地域同一運賃の制度があり、2年おきくらいに一斉値上げを繰り返していた。値上げは乗務員たちの生活を支えるためだったが、値上げすると却ってお客さんが減って水揚げが低下した。

■そこで、MKタクシーは、運賃値下げを訴え、値下申請を却下した陸運局を相手に行政訴訟を起こした。

1985年「同一地域同一運賃を原則とするタクシー行政は独禁法違反の疑いがある」との判決が出て、それがきっかけとなってタクシーの規制緩和が進んだ。

取材先 エムケイ
取材 2021/03/02
掲載 リーダーシップ2021/04
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki238.html
 

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