絵で見る創意くふう事典  》 第13章 顧客指向  》 J総合力を高めて新しい顧客をつかむ
 
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顧客指向‐1311 J総合力を高めて新しい顧客をつかむ BACK

 このページの掲載事例→              ●131101 大手からの受注を断念。ニッチの仕事に特化  
 ●131102 社員総力を結集して新技術に挑戦、赤字から脱出図る
 ●131103 地域の1軒1軒と関係を築く  
 ●131104 設計開発に特化、東大阪の加工技術を結集し、世界市場ねらう  
 ●131105 大量受注生産かkら撤退、プーリーを多品種微量生産  
 
【131101】大手からの受注を断念。ニッチの仕事に特化  


プラスチックの異形押出成型のトップメーカー、カツロン(大阪府東大阪市)の石川宏社長は、40年前、大手の仕事が欲しいと思っていた。大手メーカーに製品を納入すれば信用がつき、同じものを大量生産すれば経営が安定すると考えた。だが、大手から念願の注文をもらっても、喜びは長く続かなかった。

ある日突然先方の購買担当者から「来月からもういいよ」と言われるのだ。大手はカツロンが作った製品と図面で、そのまま協力会社に作らせる。「大手と付き合うには対等にものが言えるだけの独自技術を持たなければならない」ということがわかるまでに似たような経験を繰り返し、以後大手の仕事はしない。これからはニッチに特化していこうと決めた。

どんな新製品も最初は小ロットから出発する。量のない世界がむしろいろんな可能性を秘めている。それに挑戦し、ものにすることで独自技術が身につく。そう考えて、その後はどんなに小ロットでも試作品でも快く引き受けることにした。「儲かる儲からないを言うより先にまず作れ」と社員に命じ、いつでも無理難題を引き受けてくれる会社という評判を手に入れた。

漁船の防舷材、お茶の葉に撚りをかける機械の内壁に貼り付けるプラスチック、眼鏡とレンズの間に挟まっているパッキン、電車やバスのドアと窓のパッキン、道路の点字ブロックなど、ユニークな同社製品は、どんなものでも引き受け、ものにする中で磨きあげた技術の結果である。

■ニッチに特化するという選択は、技術力を高めるとともに、社員の結束力も高めた。1996年、奈良に新工場を建設。それと同時に社員持株会を発足させ、石川一族の同族会社から社員みんなの会社になった。それまでの社名「かつや」が「カツロン」に変わったのも同じときである。

取材先 カツロン(tanbouki 056)
取材 2007/10/26
掲載 ポジティブ2007/12
本文 katsuron.pdf へのリンク

 
異形押出成形品(左)と見本市会場のカツロンブース
 
【131102】 社員総力を結集して新技術に挑戦。赤字から脱出を図る   

■褐テ久根(愛知県碧南市)は1950年の創業。これまでに織機、木工機、あるいは工作機械の鋳物部品をつくってきたが、バブル崩壊後、安価な中国製品に押され、存続が危ぶまれるところまで追いつめられていた。

■そんなとき、プリント基板実装機のフレームの鋳造の仕事が入ってきた。プリント基盤製造工場で高スピードでミクロン単位の細かい仕事をする大きくて重いロボットを支えるフレームを鋳物で作るという仕事だった。それまでの技術では到底作れないシロモノだった。

■同業他社が高齢者、派遣労働者、外国人研修生などをかき集めてなんとか仕事をこなす中で、同社は新卒採用にこだわり、入社した社員にはやる気を引き出し育てるための努力を惜しまなかった。

■技能検定試験への挑戦を奨励し、1級合格者が2級合格者を指導し、2級合格者が新入社員を指導する体制を作り上げていた。

■あるいは「わかった発表会」を定期的に開き、例えば「砂型に塗料を塗るのはなぜか」「溶湯の温度管理はなぜ必要か」「鉄と鋳物の違いは何か」…など、日々の仕事で学んだこと、わかったことを発表させ、発表を通じて、鋳物の知識を伸ばし、さらなる興味関心を引出し、トップを含めた全員が1人ひとりの成長を注視していることを分からせていた。

■プリント基板実装機のフレームの鋳造は、これまでにない新しい技術への挑戦だったが、社員の総力を挙げてそれに取り組んできた。そのことが評価され、中小企業庁の地域産業資源活用計画の認定を受け、さらに、政府系金融機関の低利の融資を受けられたことから、赤字から脱出、採算ベースを回復した。

■最近では、雪崩を打つようだった中国製品への傾斜から揺り戻しが起きている。品質では国内製品に勝るものはないという声があちこちで出てきている。「日本のものづくりはやはり勝ち続けなければいけません。我々は鋳物の分野で日本一を目指したい。みんなにもそう言い続けています」古久根靖社長の言葉である。

取材先 古久根tanbouki 077
取材 2008/11/20
掲載 ポジティブ2009/01
本文 kokune.pdf へのリンク

 

プリント基板実装機フレーム(左)と鋳造工場
 
【131103】 改善改革で社員をレベルアップ新規事業を開拓  

■ミヤコテック(京都市)はプラスチックと異質素材を一体成型するインサート成型の会社である。多くの電気電子部品をつくってきたが、バブル崩壊後、得意先の多くが生産拠点を海外に移したことで、受注が減少。経営基盤が揺らぎ始めた。

■この事態に対応して、市川克一社長(当時は専務)は、得意先企業の指導を受けながら、仕事の無駄を省き、社内の連携を強化し、技術レベルを高めるための改善改革に取り組んだ。具体的には

@S(整理・整頓・清掃)活動:職場を常に最も仕事しやすい状態に保った。

A平準化ボックス:工程ごとに仕切られた「平準化ボックス」に受注伝票を差し込み、受注品が今どの工程にあるかが分かるように「目で見る管理」を行なった。

Bラインの自動化:市川さん自身が電気制御回路を勉強して「ラインの自動化」を推進した。

C集中タイム:朝9001030を「集中タイム」として会話や内線電話を禁止。企画立案や書類作成に集中することにした。

D目標管理:コスト・技術・品質・納期・テクニカルなどについて、会社の方針と目標、部門目標、個人目標を決め、毎月市川さんが全員を面接して進捗と今後の予定を確認した。

1999年から、創業50周年に当たる2011年まで「チャレンジ50」と名付け、異業種交流を進めながら、新たな事業の柱を2本作ることをめざした。ひとつは、発泡スチロールに代わる環境にやさしい発泡体の開発。古紙とコーンスターチによるでんぷんを水蒸気で発泡させたもので、現在売上の20%を占めるまでに成長している。もうひとつは、改善改革の中で培った自動化技術の事業化。すでにいくつかの会社の問題解決を手伝ってきた実績がある。

■本業のプラスチック成型分野では、金属プレス加工会社と熱硬化性樹脂の素材開発会社との連携で、高精度の気体流量測定装置の部品開発に成功した。この開発は2006年、経済産業省の「新連携」の認定を受けた。このほか2003年に京都市から「オスカー」の認定、2008年に京都府から「元気印企業」の認定、プラスチック成形部門を統括するモールディング部長が「現代の名工」として表彰されている。

取材先 ミヤコテックtanbouki 081
取材 2008/12/24
掲載 ポジティブ2009/02
本文 miyakotekku.pdf へのリンク

  

インサート成型品(左)と平準化ボックス
 
【131104】 設計開発に特化。東大阪の加工技術を結集し世界市場ねらう  

コンピュータや携帯電話のCPUのプリント基板にチップを半田付けするために使われる半田ボールは、直径100ミクロン微細な球体で、溶けた金属にエアを吹き付けて作る。従来は±20ミクロンのバラツキがあったが、東大阪のユタカ会社は、これを±0.2ミクロンの高精度で選別できる装置を開発し、世界中の半導体工場に納めている。

もともと伸線機や小型ネジ製造装置を作っていた。経営者が急逝し息子の安田憲司さんが社長となった。技術は父よりも自分が上だと思っていたが、従業員はそう思ってくれず、11人の従業員が3人にまで激減。困り果て、同業の知り合いを頼って外注することにした。以来、同社は設計開発に特化し加工を外注するようになった。

あるときある台湾人が同社のネジ製造装置を買っていき、やがて全く同じ装置が台湾から発売された。それを知り、同じ作り方をしていてはコスト的にかなわない。真似られないところまで技術レベルを上げるしかないと気がつき、研究開発に全力を注いで冒頭の球体選別装置を作り上げた。いまだに真似られていないのは東大阪の技術の粋を集めているからである。

安田さんの要求は厳しい。「そんな難しいのはできん」と断られても、「そんならウチでやろか?」と言うところが現われる。すべてを設計開発に集中し、すべての加工を数十社に外注して東大阪の技術を結集することで、同社は東大阪でしか作れない装置を世界中に供給している。

取材先 ユタカ(tanbouki 058
取材 2007/12/04
掲載 ポジティブ2008/02
本文 yutaka.pdf へのリンク


工場内部(左)とロシアからの見学者
 
【131105】 大量受注生産から撤退、プーリーを多品種微量生産   


■プーリー(エンジンやモーターの回転をベルトを介して伝達する滑車)の需要の大半は自動車・家電向けだが、発注量の多い仕事は規格や価格が発注者主導で決まり、プーリーメーカーとしては主体的な事業運営が困難になる。そこで、鋳鉄製プーリーメーカー、鍋谷バイテック(岐阜県関市)は、その分野からの撤退し、送風機・発電機・コンプレッサー・産業機械・建設用機械など、受注ロットの小さい分野の注文にきめ細かく対応している。

■そのために「寿司バーコンセプト」と呼ばれる生産方式を採用。「アワビ」「ハマチ」「トロ」…という目の前の客の注文に「はいよ!」と応えて、すぐに握って1品ずつ出す、という意味である。

■「寿司バーコンセプト」によって、毎日出荷した分だけ製造するが、既製品の工作機械は殆どが大量生産向けにできており、高性能すぎ、高速すぎ、高価すぎる。そこで、同社は12個単位のプーリーの生産に適した加工機を内作している。

■加工機の内作のためのスタッフは現在13人。全員が製造オペレーターとして採用された人たちで、選抜されてここに配属され、システムメーカーの講習会に参加して知識を広げ、後はOJTで先輩から教わりながら機械をつくる。1台の機械を作り上げるのに数週間から半年程度。何年かここで加工機づくりに携わった後は、製造部門の管理監督者として再び現場に戻っていくという。

取材先 鍋屋バイテック(tanbouki 044
取材 2007/07/05
掲載 ポジティブ2007/09
本文 nabeya.pdf へのリンク


プーリー(左)と工場内の内作化工機
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