改善の事典  》 第12章 組織  》 能力を高める
 
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組織‐1203a 能力を高める BACK


 このページの掲載事例→                          ●1203a01 パート・アルバイトを戦力化する−1  
 ●1203a02 パート・アルバイトを戦力化する−2  
 ●1203a03 同行OJTを行なう
 ●1203a04 社内勉強会を開く
 ●1203a05 社長の生き方・考え方を伝える  
 ●1203a06 接客販売の品質をトップレベルまで引き上げる  
 ●1203a07 創造性開発教室を開く
 ●1203a08 第一線監督者に問題発見と問題解決能力を身に着けさせる
 ●1203a09 改善道場で改善留学させる
 ●1203a10 ものづくり技術を伝承する
 ●1203a11 同じところに留まらず上へ上へと目指させる
 ●1203a12 他の追随を許さない金型品質を作り上げる人材育成戦略
 ●1203a13 ISO内部監査を社員教育の場として利用する
 ●1203a14 Planの前のStudyに時間をかける
 ●1203a15 高い技術を持った人材を絶対評価する
 ●1203a16 現場・現実・現物に基づいて問題解決する
 ●1203a17 業績第一主義から従業員育成に重点を移す
 ●1203a18 伊藤忠兵衛の店員管理法
 ●1203a19 職場の全員にパソコンをマスターさせる
 ●1203a20 学卒者に現場体験を叩き込む
 ●1203a21 学歴無用論
 ●1203a22 現場は研究の場である
 
【1203a01】 パート・アルバイトを戦力化する−1  


■ウォルト・ディズニーは「すべての仕事はゲストのためにある」「すべてのゲストはVIPである」と言い、子どもから高齢者まで、肩書や立場に関係なく、使ってくれるお金の額に関わらず、すべてVIPとしてもてなすことを求めた。

■東京ディズニーリゾートでは、これに沿って、来園者を「ゲスト」、お世話に当たるスタッフを「キャスト」と呼び、ショップやレストラン店員も園内清掃係も、それぞれの担当業務の責任以前に「キャスト」として「ゲスト」に奉仕することを求めている。

■「毎日が初演」ともいう。やっている方は毎日同じことの繰り返しだが、ゲストは初めての人も多い。だから、毎日初演のつもりで、気持ちを新たに、それぞれの役割を演じなさいという意味である。

■ゲストの多くがリピーターである。「また来たい」と思わせるためにゲストの反応は常にモニタリングし、分析し、次々改善改革する。ウォルト・ディズニーは「ディズニーランドは永遠に完成しない」と言っている。

■東京ディズニーリゾートのキャスト2万人のうち1万7000人はパート・アルバイト。ゲストとして受けた感動が忘れられず、今度は自分が夢と感動を与えたいと思って入社した人たちである。彼らには3日間の教育が行われるが、その概要は次の通りである。

1日目:「すべての仕事はゲストのため」「すべてのゲストはVIP」「毎日が初演」の基本ポリシーを具体例を交えて解説する。

2日目:アトラクション部門、レストラン部門などの担当に分かれて、座学でSCSESSafety安全、CCourtesy礼儀正しさ、SShowショーの品質、EEfficiency効率)の行動基準を学ぶ。

3日目:先輩キャストについてOJT訓練を受け、その後は1人前のキャストとしてそれぞれの職場にデビューしていく。

取材先 オリエンタルランド
取材 2006/5/18
掲載先 ポジティブ 2006/08
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki013.html

 

 
【1203a02】 パートアルバイトを戦力化する−2  

がんこフードサービス難波店では、新人のパート・アルバイトのレジ案内係を即戦力化するために、職場のQCサークルが次のような指導計画を作成している。

@1週間で戦力化するために7日間のトレーニングスケジュール(左下)を作成。担当を決めて指導する。

A次の事項について自分ひとりで学習できるように、マニュアルを作成。
・「経営理念」と「接客10大用語」
・レジ案内係の立ち居振る舞い
・レジの基本操作
・レジの開店業務とレジ閉め業務
・レジ引継連絡書
・レジ周りと玄関周りのクリンネスチェック
・フロアの配置とテーブルaA定員
・案内の流れと声かけの留意点
・案内時の気配りポイント


取材先 がんこフードサービス難波本店
取材 1998/05/26
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki014.html
 
 
 【1203a03】 同行OJTを行なう  

[改善前]
兜髄野のクリーンサービス事業では、技能とCS(顧客満足)向上のために、現場社員には月1回上司が同行して現場で仕事の仕方、機器の使い方をOJT教育することになっていたが、部下が嫌がって、なかなか徹底できていなかった。

[改善後]
そこで、部下の賞与にOJT回数を反映させることにした。その結果、部下からのOJT希望が一挙に増え、部下の数を減らしてほしいという管理者が増えた。




取材先 武蔵野
取材 200/09/13
掲載先 燃えよリーダー 2002/11
探訪記  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki001.html

 
 
 【1203a04】 社内勉強会を開く  


新潟の印刷業、タカヨシの高橋春義社長は、外部の勉強会で学んだことやそこから自分で展開した考えを伝えるために「タカヨシ塾」を始めた。

■社員の中から希望者を集め、月に3回、始業前の6時から8時まで。2年間でメンバーを入れ替える。たとえば…
・著名な経営者の講話テープを聞き、それについてディスカッションする。
・その中で高橋さんが自分の考え方を述べ、塾生たちも意見を述べる。
それを繰り返す中で気持が通じ合うようになり、その後、この塾で育った中堅社員が自信をつけ、各事業分野が競い合うようにして業績を伸ばした。

取材先 タカヨシ
取材 2006/03/06
掲載先 ポジティブ 2006/05
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki009.html

 
タカヨシ塾
 
【1203a05】 社長の生き方・考え方を伝える  


■クリーニング業、クリーンサワの澤浩平社長は「自分はお客様から育てていただいた」という。

■クリーニング業というのはそんなに儲かるビジネスではないが、お客様に一番近い所で、お客様に一番喜んでいただける仕事である。あまり利益が上がらなくても、もっとお客様にいただこうと工夫すれば、その中で、自然に知識・技術が身についていく。それで十分だと思う。今日の命を精一杯燃焼させて生きられるなら、いつどこで息絶えても惜しくないと思っている。

■クリーニング業の中で身についた自分のそんな生き方を社員に伝えるために、20年近く前から、澤さんは自分が講師になって社内研修会を開いている。これまでに300回を数える。テーマは、クリーニング、繊維素材、報告連絡相談、少子高齢化、グローバリゼーション、イノベーション、健康管理…。

■毎回その話を聞いて感じたこと感想文を数行で書かせており、それを冊子にまとめて残している。ずらりと並んだ300回分の感想文集を「これこそがわが社の基本財産です」と澤さんは言う。

取材先 クリーンサワ
取材 2006/06/15 
掲載先 ポジティブ 2006/0
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki012.html


クリーンサワの社内研修会
 
【1203a06】 接客販売の品質をトップレベルまで引き上げる   


■婦人アパレル企画販売業、クロスカンパニーの石川康晴社長は、製品の品質とともにそれを接客販売する人の品質を全国トップレベルにまで高めている。

■「人と製品の品質日本一」という品質方針をポスターにし、カードにして全員に配り、朝礼・終礼で唱和している。

■新入社員教育で、お辞儀の仕方、声の出し方、笑顔の作り方…などを教え、中途入社者には先輩社員がマンツーマンで指導するほか、接客技術を磨くために基本塾、練達塾というスキルアップ研修の機会がある。

■「ベストオブクロス」というロールプレイングコンテストを2006年から開催。社外から招いた女優さんにお客様役を演じてもらい、販売のロールプレイングを行う。そのときの応対を審査員が採点する。

■店舗予選、地区予選を勝ち抜いた20人で決勝。上位5人が表彰され、副賞として1人100万円のヨーロッパ研修旅行がプレゼントされる。富裕層と同じ遊びを経験し、富裕層の心をつかむ。

■部門マネジャーたちは、各地の店舗の優秀社員を集めて特訓しており、そのための交通費、宿泊費などの費用は莫大な金額になるが、これによって優れた接客応対技術が最短のスピードで全社員に浸透する。「コストと考えればとても出せる金額ではない。しかしこれは投資です。これによって社員の能力、お客様の満足度、店の価値、ブランドの価値を高めることができるのです」と石川社長は言う。



取材先 クロスカンパニー
取材 2008/04/30
掲載先 ポジティブ 2008/0
探訪記  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki066.html

 


ベストオブクロスのロールプレイングコンテスト 
 
【1203a07】 創造性開発教室を開く   
 
■自動車部品メーカー、クラタでは、工場の一郭に「創造性工房」を設け、現場リーダークラスを中心に創造性開発教育を行っている。アイデアの出し方のコツを学び、最後に自分たちが考えたアイデアを木工細工で形に表す。

■工房の中に木工機械が備えられていて、例えばプレス機の上下運動を滑車を使って横の運動に変えられないか、コンベアの動きを利用して治具の動きを同期化できないか…などの発想を木で模型を作って実験し、行けそうだとなれば改善道場で金属材料を使って実作する。


取材先 クラタ
取材 2000/06/27
掲載先 プレス技術 
 2000/09
 
 
 【1203a08】 第一線監督者に問題発見と問題解決力を身につけさせる    

自動車部品メーカー、マルヤス工業では、第一線監督者に問題発見・問題解決能力を身につけさせるために、次のような研修を行っている。

@第一線監督者層の中から順次3人を選抜してチームを編成。70日間職場を離れ、与えられたテーマに集中して改善を行わせる。
Aテーマは各部が持ち回りで提案。提案部門の職制、改善事務局、この研修会のOBが見守る中でチームメンバーは、現状調査→原因追究→対策立案→改善実施→成果確認のステップを進める。
B研修スケジュールには2回の合宿による改善教育と精神修養、会社のトップの前での2回の発表が組み込まれている。

取材先 マルヤス工業
取材 2002/01/28
掲載 プレス技術
  2002/04
本文 maruyasu.pdf へのリンク
 
 
 【1203a09】 改善道場で改善留学させる    

■ダイキン工業滋賀製作所では、オペレーターの改善技能、保全技能を高めるために、ラインから4カ月間外して保全部門の保全グループ、改善グループに預ける改善留学制度、保全留学制度を実施している。

■対象は社内改善教育を修了し保全技能資格を取得した人の中から人選。期間中は改善道場でベテラン社員のアドバイスを受けながら、自分で図面を描き、材料を発注して、自職場のために自動機を製作したり、予防保全システムを製作し、4カ月後に成果発表する。

■修了者には「テクニカルリーダー」の称号とバッジが送られる。


取材先 ダイキン工業滋賀製作所
取材 1998/11/09
掲載先 TPMによる利益を生み出す体質づくり (1999)
 
 
 【1203a10】 ものづくり技術を伝承する   


■製造工程のかなりの部分が海外に移り、団塊世代の大量退職が始まったことで、高度の熟練技能が失われていくことを危惧したトップの指示により、
セイコーエプソンは、2002年、技能教育の再構築のために「エプソンものづくり塾」をスタートさせた。

■技能道場、効率化道場、先端技術道場、設備保全道場などがあり、塾生は、新入社員、課題を持つ中堅社員、管理監督者、協力会社社員、さらに地域貢献の一環として長野県内の工業高校の先生らも含まれている。その塾生たちを、現代の名工、県の名工、エプソンの名工などのタイトルを持つ30人が指導に当たっている。

■指導に使われる機械は3060年前の古いタイプのもの。数値を入力するだけでものが出来上がる最近の機械とは違って、自分で材料をセットし、位置決めし、何度も調整しなければならない。そういう機械を使いこなすことで、加工プロセスが理解できるという。

■塾では技能五輪をめざす若手社員も育成する。一般採用とは別枠で採用された人たちで、通常58年かかる技能を2年間で習得する。その2年間は教える方も教えられる方も真剣勝負で、先輩・後輩の人間関係の中で、あいさつ、服装、生活態度、目上の人を敬う心などを教え、厳しい訓練を経て、技能五輪メダルを目指す。メダリストたちは他の社員の目標となり、それが全体のレベルアップにつながると期待されている。

取材先 セイコーエプソン
取材 2007/06/01
掲載先 ポジティブ 2007/08
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki043.html

 


エプソンものづくり塾での実習風景
 
【1203a11】 同じところに留まらず上へ上へと目指させる    

■ニート、フリーター、障害者などの就労困難者に働く場を提供することを、自社の社会的責任と宣言しているシステム関連事業「アイエスエフネット」では、健常者社員は就労困難者1人ひとりについてどんなケアが必要かを話し合っている。

■その中で健常者たちは、自分が担当する仕事の一部、例えば書類のコピーや資料作成などの仕事を彼らに切り出して提供しており、就労困難者たちはそのようにして安定的な仕事のベースを持ち、空いた時間でシステムエンジニアの資格取得の勉強をしている。

■仕事を切り出すことで、健常者の手元には責任の重い、生産性の高い仕事が残る。そして、ハンディを克服した就労困難者もやがて同じように生産性の高い仕事を目指すようになる。

■1人ひとりに同じところに留まることを許さず、上へ上へと目指させるこの仕組みが、同社の成長を支える原動力となっていると、渡邉幸義社長は語っている。

取材先 アイエスエフネット
取材 2013/07/24
掲載先 リーダーシップ 2013/09
探訪記
  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki148.html

 


就労困難者の執務風景(上)と障害者の家族と語る会
 
【1203a12】 他の追随を許さない金型品質を作り上げる人材育成戦略   


■山岡製作所(京都府城陽市)は金型製作の分野でトップクラスの技術・技能を持つ会社である。「失われた20年」の中で、同業者の多くが海外に移って行く中で、山岡祥二社長は国内に踏みとどまり、他の追随を許さない高品質の金型をつくり続けようと決意し、計画的に人を育て、その成果を確認できるシステムMOSManagement Of Skill、技能経営)を作り上げた。

■部長・課長8人で構成する教育推進委員会があり、職種ごと、職能段階ごとに必要な知識・技術・スキルを洗い出し、教育科目やOJT項目を設定。教育科目は現在約200科目。たとえば、KYT訓練、5Sの実践、安全衛生、QC教育、生産管理システム、組立要素、機械計測、ネジ締め付け作業、読図、工作機械、プレス機械、組立作業…。社内の担当者が社外講習会を受講し、自分で勉強し、テキストを作成、自ら講師となって他の社員を教える。

OJTも計画的強制的に行われる。毎年4月に1人ひとりのスキルを上司が評価し、その後のOJT計画を策定。結果を記録する。

■教育訓練と並行して「マンパワーUP活動」を展開している。1人ひとりが1年間のテーマを決めて改善活動を行う。

取材先 山岡製作所
取材 2013/09/18
掲載先 リーダーシップ 2013/11
探訪記 
 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki150.html

 


社内講習会(上)とOJT風景
 
【1203a13】 ISO内部監査を社員教育の場として利用する    


■ISOでは、品質保証や環境保全のためのルールや仕組みがきちんと機能していることを組織の内部で監査するよう要求している。
清川メッキ工業(福井市)では、その内部監査を社員教育の場として利用している。

■当初、部課長が内部監査を担当していたが、現在は係長、主任および入社4〜5年目の職場リーダークラスから今後の管理職候補と目される人を部門長が指名する。

■指名された社員は社内の「内部監査講習」。そこでは、お客様の視点、社会の視点から内部監査することを学び、さらに、内部監査員の中でチームに分かれて質問事項を検討したり、チームごとに模擬審査を試みて監査の技法を学ぶ。

■内部監査の実施後には、内部監査員は被監査部門の部課長から監査員としての力量が評価される。そのとき評価の低かった者は次回以降、評価の高かった者とペアを組んで監査に当たり、力量の向上を図る。

取材先 清川メッキ工業
取材 2014/12/22
掲載先 リーダーシップ 2015/02
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki165.html
 

 
 
メッキ職場の内部
 
【1203a14】 Planの前に Studyに時間をかける   


■清川メッキ工業(福井市)では
PDCAではなくSAPDというマネジメントシステムを推奨している。

通常のPDCA(PlanDoCheckAction)は経営層がPlanを提示することから始まり、そのPlanに基づいてやってみて、結果をチェックし、改善して、次のPlanに反映させる。

■これに対してSAPD(StudyActionPlanDo)は、Study(学習、勉強、研究、考察)から始めるというもので、Studyの段階で、自分たちがやろうとしていることの方向性を見極めるために十分な調査、研究を行う。その次のActionで、自分たちの実力を見直し、次にそれに見合ったPlanを策定し、そして、Doで実行に移す。

■現在は将来予測がきわめて難しい時代である。PDCAの最初のステップで、自分たちの勝手な思い込みで過大なPlanを掲げてしまうと、DoCheck Actionも大きくブレる恐れがある。Studyに時間をかけることで、そのブレを最小限に抑えることができるという。



取材先 清川メッキ工業
取材 2014/12/22
掲載先 リーダーシップ 2015/02
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki165.html


「ISOを活かす経営」(清川メッキ・JACO共同出版2013) 
 
【1203a15】 高い技術を持った人材を絶対評価する   

■特殊バネを1〜数個、受注生産する東海バネ工業では絶対評価主義をとっている。

■例えば、10人の職場で1番は誰、2番を誰…と順番をつけ、それに応じて評価を決める相対評価主義に対して、絶対評価主義は1人ひとりについて前期に比べてどれだけ伸びたかを評価するものである。たとえ1番でも同じところに留まって伸びなければ評価せず、10番目であっても、前期よりも10%でも20%でも伸びたらそちらの方を評価する。

■多品種微量要素生産ではお客様学校求めるものはその都度変化する。求められる技術に限界がないから、高い技術を持った社員をどこまでも高く評価するのである。



取材先 東海バネ工業
取材 2017/09/25
掲載先 リーダーシップ 2017/11
探訪記  http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki197.html  

 
バネに関する3つの国家資格(線バネ製造技能士、薄板バネ製造技能士、金属熱処理技能士)の取得者には「プラチナ賞」が贈られ、手形の陶板が掲げられる。
 
【1203a16】 現場・現物・現実に基づいて問題解決する   


■本田宗一郎は現場・現物・現実を重視する人だった。問題が起これば、ただちに現場に出向き、現物を凝視し、五感を駆使して現実を把握して、問題解決の方法を考えた。

■ホンダではこれを「三現主義」と呼び、現場で現物を見て現実的な対応をとることを全社員に奨励し、現実を確認しないまま机上の空論に時間を空費することを戒めている。



取材先 本田宗一郎ものづくり伝承館
取材 2021/08/04
掲載先 リーダーシップ 2021/09

参考文献 野中郁次郎著「日本の企業家7・本田宗一郎」(PHP研究所 2017P147
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki243.html 
 
現場の床面に図面を描いて議論する
 
【1203a17】 業績第一主義から従業員育成に重点を移す    


■美容室「バグジー」を展開する九州壹組は、徹底した売上第一主義だったが、売上、売上…と攻め立てられることに耐えられなくなった大勢の社員が辞めていき、店が回らなくなった。

■倒産寸前まで追いつめられ久保華図八社長は、「自分の至らなさのために大勢を辞めさてしまった」と気づき、社員の前で頭を下げ、以後、売上や利益よりも働く人の幸せを第一に考える経営に徹すると誓った。

@   成果主義賃金を、年功賃金に切り替え、評価の重点を会社への貢献よりも個人の成長に置いた。

Aトップダウンで決めていた売上目標と利益目標を自己申告による個人目標の積み上げ方式に改めた。


B自己成長率の高いものを店の責任者とし、彼等を中心に経営計画を決めた。

C美容師として独立するのに必要な知識技術を習得させるためのキャリアプランと教育訓練マニュアルを作成、入社後15年間ですべてを教える教育訓練体制に切り替えた。



取材先 九州壹組
取材 2019/01/10
掲載先 リーダーシップ2019/03
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki213.html

 
九州壹組の研修風景
 
 【1203a18】 伊藤忠兵衛の店員管理法  


■伊藤忠商事と丸紅の創業者、伊藤忠兵衛が大阪に繊維製品の店「紅忠」を出店したとき、近江豊郷村の伊藤忠兵衛屋敷は妻、八重が守っていた。「紅忠」に採用された店員は、ほとんどが近江出身で、採用後数カ月はここで読み書き算盤、行儀を教わり、その間に八重夫人が適性を見極めて忠兵衛に進言した。また、店で不始末のあった者はここに戻され、再教育を受けた。

■忠兵衛は「店法」をつくり、従業員の販売権限と義務を明確にした。成績を上げた者には報奨金を出し、利益が上がると豊郷本家、店、そして店員に配分するという「利益三分主義」を定めた。

■店内で毎月1回例会を、半年に1回大会を開いた。いま何が売れているか、どんな客が、何を、どんな目的で買っていくか、店の経営状態をみんなで共有するために、1人ひとりに意見を聞いた。いつ意見を求められるか、どんな専門的な質問が飛んでくるかわからなかったから、みんな一生懸命勉強した。

■月に6回、1の日と6の日に「すき焼きパーティ」が開かれ、この日は支配人、番頭、丁稚の身分を超えてみんなで鍋を囲み、自由に議論を戦わせた。

取材先 伊藤忠兵衛記念館
取材 2019/08/23
掲載先 リーダーシップ2019/10
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki220.html

 


伊藤忠兵衛屋敷の台所(上)と
1900年当時の伊藤本店店員
 
 【1203a19】 職場の全員にパソコンをマスターさせる  

■日立金属安来工場では、職場の全員にパソコンをマスターさせるために次のような取り組みを行った。

@中高年監督者を対象とした「パソコン教室」を開講。「メールの使い方」「EXCEL」「WORD」などを教えた。

A研修と並行してパソコンを利用した仕事の改善テーマ(「消耗品をパソコンで管理する」「作業実績をパソコンで集計する」など)を設定。その進捗状況を1カ月ごとに発表させた。

B監督者たちがパソコンに習熟しパソコン配備数も増えると、小集団活動リーダーを対象に「パソコン教室」を開講。以後、小集団活動の分析資料、発表資料がパソコンで作られるようになり、パソコン利用が全従業員に広がった。

取材先 
日立金属安来工場
取材 1999/08/12
掲載先 燃えよリーダー 1999/09

  
 
 
 【1203a20】 学卒者に現場体験を叩きこむ  

■クボタの創業者、久保田権四郎翁は優秀な鋳物技術者だったが、それ以上に人を使うことが巧みだった。他人の技術や学問を積極的に評価し、優秀な技術者や学卒者を積極的に採用した。

■「何でもやってみなければわからん。仕事は学問以上のことを教えてくれる。理屈はそれからじゃ」というのが口癖で、学卒者にも現場体験を叩き込み、そのうえでどんどん仕事を任せた。

取材先 クボタ
参考文献 沢井実著「日本の企業家4・久保田権四郎」(PHP研究所 2017
取材 2021/10/27
掲載先 リーダーシップ2021/12
探訪記 
http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki245.html

 

回転式鉄管鋳造装置
 
  【1203a21】 学歴無用論  
 

■アメリカの企業は必要な仕事のために必要な能力を持った人材を求めて求人する。そこでは仕事の価値、人材の能力に応じて報酬が決まり、人は自分の価値を認めてくれる企業があれば、何度でも転職する。

■これに対して、日本企業は一旦会社に就職すれば定年までそこで働くという慣習をベースに年功序列が形成されており、遅れず、休まず、働かずという風潮が、優秀な才能を埋没させ、無能をぬるま湯に温存してしまっている。

■人を入社前の学歴だけで評価している限り、日本企業はぬるま湯から抜け出せず、営利に徹した欧米の会社に勝てるはずがない。

■ソニーの創業経営者、盛田昭夫翁は、こうした考え方から「学歴無用論」を提唱し、実力主義の風土を作り上げることの大切さを説いている。

参考文献 盛田昭夫著「学歴無用論」(朝日文庫1987)

探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki254.html
 
 
   【1203a22】 現場は研究の場である  

■川崎製鉄の創業者、西山弥太郎翁(1893-1966)は、川崎造船所の製鈑工場時代、技術員として入社すると、ほとんどの時間を現場で過ごし、職工たちと一緒に働いた。現場を観察し、現場で技術書を読み、課題の発見と生産性向上に力を注いだといわれる。現在の西山弥太郎記念館に「現場が川鉄の研究の場だ」という書が残っている。

取材 JFEスチール東日本製鉄所千葉地区見学センター 2023/01/25

掲載先 リーダーシップ 2023/03
探訪記 http://www.souisha.com/tanbouki/tanbouki257.html

 
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