絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 F任せる
 
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組織‐1207 F任せる BACKNEXT

仕事を命じる側が、すべて詳細に指示して、その範囲でやらせようとすれば、人は自ら考えることを辞め、その範囲でしか行動しなくなります。しかし、実際には指揮命令者の想定していなかったことがたくさん起こります。組織としてそれに対応するには、1人ひとりを信じ、一定の範囲で任せることが必要です。

 このページの掲載事例→                        ●120701 信頼して任せる  
 ●120702 自分たちで販促資料を作らせる  
 ●120703 社長とチャレンジ契約を結ぶ  
 ●120704 手を挙げた人にやらせる  
 ●120705 開発の意思決定を社員に任せる 
 ●120706 評価項目を自己申告させる
 ●120707 失敗を恐れない長大な時間感覚
 ●120708 社長1人で決める会社からみんなが使命感を持てる会社へ
 ●120709 学生の提案を受け入れ、みんなの会社をめざす
 ●120710 若手管理者に提言させる―1
 ●120711 若手管理者に提言させる―2
 ●120712 「経営の日」をつくる
 ●120713 「建設の日」をつくる
 ●120714 経営計画を社員に決めさせる
 ●120715 外国人旅行者のおもてなしを従業員に工夫させる
 ●120716 外国人を信じて任せる
 ●120717 業績第一主義から従業員第一主義に転換する
 ●120718 部下の提案をフォローする
 ●120719 社員の仕事をフォローする
 ●120720 「社員が1番」と宣言する
 ●120721 非行少年・少女たちを信じで任せる
 
【120701】 信頼して任せる  

■松下幸之助氏が電気器具の製造を始めた頃、ソケットが売れて生産が追いつかなくなり、人を雇うことにした。

■このとき同業者間で秘密にされていたソケットの材料となる練り物(アスファルトから石綿、石粉などをまぜあわせてつくる)の製法を新しく入った従業員にすべて教えた。重要なことを任された従業員は信頼されたことの期待に応えようとし、意慾的に働いたという。
■「大切なことはまず信頼することです。それで損をすることがあったとしても、信頼して騙されるのならそれで本望。それくらい徹底すれば案外人は騙さないものです」晩年、幸之助氏はそう語ったと言われる。

参考文献:「松下幸之助からの手紙」
掲載 燃えよリーダー2000/05
  
   
 
【120702】 自分たちで販促資料を作らせる   


■自動車販売会社で新車が発表される時、営業所では本社から送られてきた販促資料によって営業マン教育が行われたが、一方的に与えられる情報を聞くだけでは、営業マンはあまり熱心になれなかった。 

■そこで、新車の現物が来てから営業マンにそれを自由に触らせて自分たちで販促資料を作らせることにした。できた作品はみんなの前で発表させ、優秀作品には商品も出した。

■そこで、その後に本社からの販促資料を配ると、営業マンたちはそれと自分たちの作品を比較してチェックし、その後の展示即売会はみんないきいきと自信と誇りをもって説明に当たった。


参考文献:清水勤著「人を動かす力」(日経連広報部、1989)
掲載 燃えよリーダー2000/05
  

   
 
 【120703】 社長とチャレンジ契約を結ぶ  

■化成品メーカー、三洋化成工業には、社員が挑戦したいテーマがあれば、社長との間でチャレンジ契約を結ぶという制度がある。口に出して挑戦させることで周りの協力を得やすくし、成功の確率を高めるのが狙いである。

■挑戦したい社員はテーマとともに挑戦期間、協力者名、希望する褒美(海外旅行、夫婦同伴ディナーなど)、失敗した時のペナルティ(事務所の掃除など)を申告する。経営会議で採用と決まれば、社長との間で契約書を交わし、全体朝礼でチャレンジ宣言する。


取材先:三洋化成工業
掲載 燃えよリーダー2000/05
  
 
 
 【120704】 手を挙げた人にやらせる  

■アルバイト・パートの採用代行業、ツナグソリューションでは、社長を含む全員で会社の業績を確認。何が課題かを話し合っている。そのとき、課題解決のために1人1人は「それなら私はこの課題に挑戦する」とみんなの前で宣言する。

人はその後、半年後にどこまで達成できたかを発表、結果を自己評価する。聞いている人は、どうしてそういう評価になったのかを質問できるから、評価は自ずと妥当な線に落ち着く。それがそのまま報酬に結び付く。


取材先 ツナグソリューション
取材 2011/04/21
掲載 リーダーシップ2011/07
本文
 tsunagu.pdf   
 
 
【120705】 開発の意思決定を社員に任せる   


■電気工事用品の開発には金型製作費など何百万円もの開発投資が必要になるが、未来工業では新製品の開発には売れるか売れないかの判断、開発投資に踏み切るかどうかの判断は提案者本人に任せている。

■任せられているから、開発担当者は、何度も現場に足を運び、現場を観察し、工事業者から話を聞き、あらゆる可能性を考えて、納得できるまで完璧なものに仕上げる。アイデアの完成度が高いから、成功の確率が高くなるという。

■同社相談役で実質トップの山田昭男氏は、若い頃演劇青年だったらしく、相談役室には壁一面に全国の演劇興行ポスターが貼られている。全国の友人、知人、協力者から送られてくるもので、山田氏はこれを毎日丁寧に張り替えるのが日課だという。

■部下たちに任せられる仕事は任せればよい。管理者の仕事は部下たちの仕事を認め、励まし、やる気を盛り上げることだ。「当社では率先垂範は禁止なのだ」と山田氏は言われる。経営者や管理者が先頭に立って部下と同じことをすれば、部下は仕事を奪われたと思ってやる気をなくす。

■「報連相も禁止だ」とも言われる。上司が部下に報告・連絡・相談を求めれば、部下はその後の事は自分に責任がないと思ってしまう。管理者は報告・連絡・相談を待ち受けるのではなく、自分から部下の仕事に関心を持ち、部下をサポートする上でわからないことがあったら、聞きに行くべきだと言う。山田氏が毎日悠然と芝居のポスターを貼り替えているのは、戦術は任せるということのポーズであるようだ。

取材先 未来工業(tanbouki 004
取材 2006/01/12
掲載 ポジティブ2006/03
本文 mirai.pdf へのリンク

 
 
 【120706】評価項目を自己申告する  


■プリント基板ハンダ印刷版洗浄装置メーカー、サワーコーポレーション(大阪府枚方市)には独特の能力給制度があり、250に及ぶ能力評価項目とプラス2点〜マイナス1点の4段階の採点基準がある。

250の評価項目は「経営の日」に全社員がこの項目で評価してほしいという項目を出し合って決めた結果で、毎年新しい項目を追加し、陳腐化した項目は削除される。

250項目のうち3分の2は全社員に適用される基本的項目で、例えば、「大きな声で挨拶ができる」「電話応対ができる」「ワープロで文書作成ができる」など。残りの3分の1は、営業や技術などの職種ごとの専門項目。ただし、例えば技術者が簿記の資格を持っていて経理担当も代行するなど、専門能力以外の能力も持つ場合には、その項目についての評価も加えることができる。

■各人は毎年1回、この評価項目の中から評価してほしい項目を自己申告し、1年後に自己評価して上司に提出する。上司と澤入社長がそれを見て評価結果を修正し、本人ともう一度話し合って、双方が納得すればそれが評価結果となる。

■1点の単価は2000円。得点合計に2000円をかけたものがその人の給料である。評価項目はいくら増やしてもよく、技術者が営業関係の評価項目を選ぶなど、担当外の項目を選ぶこともできるから、プラス評価を獲得する限り、自分で自分の給料を増やすことができる。

■「一人ひとりのセールスポイントを管理者が見抜くことは不可能です。それよりも本人からセールスポイントを申告してもらって話し合いによって給料を決めた方が社員はやる気が出る」澤入精社長はこの制度のねらいをこう語っている。

取材先 サワーコーポレーション(tanbouki 048
取材 2007/08/05
掲載 ポジティブ2007/10
本文 sawacorporation.pdf へのリンク  

 
 
【120707】失敗を恐れない長大な時間感覚
 

■鍋谷バイテック(岐阜県関市)は永禄年間の創業で、長く鋳物製品をつくってきた工房である。現代では鋳物製プーリーを製作しているが、自動車や家電製造のための大ロット生産では主体的な事業運営が困難であるとして、12個単位の小ロット生産体制に切り替え、それに適した加工機の内製化をめざした。加工機の内製化は当初失敗の連続で、軌道に乗るまでに1020年かかったという。

■創業家一族で、オーナーの岡本太一社長は「そうか、失敗したか、また頑張ればいいよ」というだけで、決して叱らなかった。そして「儲かるか儲からないかではない。そうすることが自然か自然でないかを判断基準にしろ」と言い続けたという。

■一般には、会社が株主のものになり、株主の利益追求、短期利益志向が強まっている中では、失敗を恐れる傾向が強まっているが、450年の歴史を持つ同社オーナーには、長大な時間感覚があり、その中で経営の方向が決められている。

取材先 鍋屋バイテック(tanbouki 044
取材 2007/07/05
掲載 ポジティブ2007/09
本文 nabeya.pdf へのリンク

 
↑プーリー(左)と工場内製加工機
 
【120708】社長1人が決める会社からみんなが使命感を持てる会社へ   


■カルモ鋳工(神戸市)は自動車のアルミエンジン部品を試作する会社である。従来は木型の製作を型屋に依頼し、それで砂型を作り、アルミを流し込んで試作品を作っていた。

■発注者の自動部品メーカーからは、従来紙の図面が渡され、それをそのまま外注先の型屋に渡してきたが、ある時から紙の図面がデータに代わった。型屋には、それに対応する力がなく、「それなら我々がデジタル化に対応して木型作りを内製化するしかありません」と高橋直哉専務は社長に進言した。社長からその対応を任され、CAD/CAMとそれに対応した加工機を導入。試行錯誤の末に同社は型の設計から素材、加工、仕上げまで一貫して引き受けられる鋳造品メーカーとなり、その後、高橋さんは社長に就任した。

■「黙って俺についてこい」という高橋さんだったが、やがて、それでは会社は社長1人の器量以上に大きくなれないと考えるようになった。社員1人ひとりの立場になって考えると、この会社で働きながら、どれだけ成長できるか、どれだけ豊かな経験を積み上げることができるかが問われている。高橋さんはそう考えて「社員1人ひとりが使命感を持って仕事に取り組める会社にしたい」という声明文を全社員の前で読み上げた。その後、同社は次のような活動を行なっている。

■経験豊富なリーダー的立場の13人を集めて、毎週1回月曜の夜に90分間の勉強会を始めた。最初は高橋さんから社員に向けた一方通行の話だったが、やがて、他社の取り組みをビデオでみたり、リーダーシップ、やる気の高め方、コミュニケーションの大切さなどについて、著名人たちの講話のテープを聞いたりした。だが、そこで語られている内容が自分たちのレベルとかけ離れていると思うようになった。

■そこで、できることから行動に移そうと、毎朝30分、全員で5S運動を始めた。自分たちの手できれいにすることで、給料のために働くだった場が、少しだけ自分たちのものになった気がした。

■毎週月曜の勉強会は、安全衛生・設備改善・ミス防止などについてみんなで現状を確認し、問題点をみつけ、それをひとつひとつ改善していく活動に発展した。

■業界団体による同業者や異業種の工場見学会にはできるだけ積極的に社員を派遣するようになり、納入先であるメーカーの担当者が来社された時は、従来は高橋さんと営業担当が応対していたが、設計担当や現場担当も同席させるようにした。できるだけお客様を意識した仕事に仕向けるためである。

取材先 カルモ鋳工(tanbouki 064
取材 2008/03/25
掲載 ポジティブ2008/05
本文 karumochuko.pdf へのリンク 

 
↑毎朝の5S活動と毎週月曜日の勉強会
 
【120709】学生の提案を受け入れ、みんなの会社をめざす    


■ものづくりの町、墨田区の工場はどんどん数が減っており、区はそれに対応して大学との産学連携の推進をすすめている。浜野製作所はその行政からの提案に呼応して、大学の経営学の先生の授業のために会社を開放し、学生たちを受け入れ、すべての経営データを公開。会社をもっとよくするために、営業面、財務面、生産管理面の提案をしてもらっている。

■学生たちは事業についての知識経験があるわけではなく、直接的な効果を期待したわけではなかったが、彼らの素朴な疑問にひとつひとつ答えていくことで、多くのことを気づかされたという。

■その延長でいまも5大学10数人の学生がインターンシップの形でこの会社に集り、社員と一緒になって会社をよくする工夫を話し合い、様々な提言をしてくれている。

■学生たちは会社のホームページ、会社案内のパンフレットをつくってくれた。社員が毎日の仕事の感想を自由に書き込む社内ブログも学生たちの提案で始まった。員の意識調査をしてくれ、社長には直接言えない社員のホンネを引き出してくれたこともある。

■こうして始まった社内ブログで浜野社長は、ある社員の書き込みを見て胸が熱くなったという。「みんなの会社じゃないですか、もっとみんなで盛り上げていきましょうよ」とあった。

■それがきっかけで浜野社長は自分の家族が持っていた会社の株の一部を幹部社員に買ってもらうことを決めた。「今までは浜野家がオーナーだった。これからはみんなの会社にしていきたい」社員の前でそう宣言した。この宣言とともに同社は新しい飛躍に向かって羽ばたこうとしている

取材先 浜野製作所(tanbouki 028
取材 2006/12/15
掲載 ポジティブ2007/02
本文 hamano.pdf へのリンク


↑浜野製作所の社屋と事務所内
 
【120710】若手管理者に提言させる―1    

■転写印刷機メーカー、ナビタス(堺市)では、若手幹部を育成するために「ジュニアボード」を組織している。7つの部門から1人ずつ選ばれた中間管理職が集まって役員会の数日前に役員会と同じテーマで議論し、ジュニアボードとしての意見を役員会に提案する。当初は与えられたテーマについて議論するだけだったが、その後自分たちなりのテーマでデータを集め、提案することが増えた。メンバーの任期は2年。多くの社員がメンバーを経験した結果、全社的な視野で物事を考えられる社員が増えている。

取材先 ナビタス
取材 1993/12/03
掲載 燃えよリーダー1994/01 
 
 
【120711】若手管理者に提言させる―2     

■ソフト開発会社、ユーザックシステムがコンピュータ販売をしていた頃、その当時の取引相手が,中小・中堅企業の経営トップで、社員には経営感覚が不可欠だったことから「ジュニアボード制度」をつくった。

■選ばれたメンバーは役員会から提起されたテーマについて検討し、意見をとりまとめて役員会に提言する。その提言の中から,資格取得者に祝い金や手当を出すという公的資格取得奨励制度が生まれている。また、近年は同社が得意としてきた物流システムが不況によって伸び悩んでいることに対応して,物流システム提案に関わる社員教育のあり方の再検討をすすめている。

■現在のジュニアボードは30代の課長クラスが中心。2001年からはもっと若い20代を中心に「ヤングボード制度」を併設し、このクラスには主に働きやすい環境づくりの提言を求め、最近は、自立型社員育成のために従来トップダウンで決められてきた年間計画に、個人の意見をどう反映させるかというテーマに取り組んでいる。


取材先 ユーザックシステム
取材  2012/07/17
掲載  リーダーシップ2012/09
本文  
usac.pdf へのリンク
 
 【120712】「経営の日」をつくる  


■プリント基板ハンダ印刷版洗浄装置のメーカー、サワーコーポレーション(大阪府枚方市)では、毎月1回「経営の日」と「建設の日」を設けている。

■「経営の日」は、正社員21人の全員参加で事業計画、売上目標、組織改革など、経営に関するあらゆるテーマを話し合う。自ら手を上げた社員にはチャンスが与えられ、やってみて、次の「経営の日」に結果をフォローする。

■電子機器のプリント基板には松脂で練ったペースト状のハンダが印刷されている。1回印刷すると印刷機の側にハンダかすが残るから、その都度メタルマスクを洗浄しなければならない。従来はトリクロロエタンの槽に浸けて洗浄していたが、それがオゾン層を破壊することがわかって、1996年から禁止されることになった。サワーコーポレーションは、メタルマスクにエタノールを垂らして超音波振動を与えることで、トリクロロエタンを使わない洗浄技術を開発した会社である。

■澤入精社長はその後の製品開発を、方向だけを示して、あとは社員に任せてきた。当初のハンダ印刷版洗浄装置は、エタノールを垂らしたメタルマスクにハンディタイプの超音波振動装置を押し当てながら全面をなぞるものだったが、「メタルマスクをセットしてスイッチを入れれば自動的に洗浄してくれるものを作ってほしい」という得意先の要望を営業担当の中村一也さんが聞いてきた。「こんなかたちのものを作ってはどうでしょうか」と中村さんは得意のマンガで描き、その熱心な様子に動かされて、澤入社長は「それなら、キミがやってみろ」と中村さんに任せることにした。中村さんには電気の知識も図面を描く技術もなかったが、周りのみんながそれを教えた。

■それまで取り組んできた内容を中村さんは「経営の日」にみんなの前で発表し、様々なアドバイスをもらって、また挑戦した。しかし、半年たって「やっぱりダメです」とギブアップしたとき、澤入社長は「発想を180度変えて見ろ」とアドバイスした。箱に中にメタルマスクをセットし、それに振動子を4つ並べたヘッドを押し当てて洗浄するというのが当初のアイデアだったが、それでは十分な洗浄力が出ない。そこで、ヘッドを箱の奥に取り付け、その上にメタルマスクをセットし、それを扉で押さえてヘッドに密着するようにした。

■洗浄力が向上し、6分で洗浄できるようになった。その過程が苦しかった。あるとき、イライラした中村さんがコンセントを引き抜いた。電気を切ったはずなのに洗浄が進行していた。電流を切ったり入れたりすることで、洗浄効果が上がることを発見した。こうして最初の洗浄機が完成した。

■サワーコーポレーションは、こうしたやり方で権限委譲し、参画意識を盛り上げ、部門を越えた協力を生み出し、独自技術による強い商品開発に結び付けている。それが具体的に目に見える形で現われるのが毎月第一土曜日の「経営の日」である。 

取材先 サワーコーポレーション(tanbouki 048
取材 2007/08/05
掲載 ポジティブ2007/10
本文 sawacorporation.pdf へのリンク  

 ←組立中のプリント基板ハンダ印刷版洗浄機
 
【120713】「建設の日」をつくる   


サワーコーポレーションは「経営の日」のほかに、第3土曜日を「建設の日」と決めている。

1991年。同社トマト栽培用のビニールハウス跡地を仕事場にして創業した。澤入精社長とその家族を含む数人で、床にコンクリートを打ち、壁をつくり、コンクリートパネルに脚を付けただけの机や作業台をみんなで手づくりするところから始めた。当時は毎日が「建設の日」だった。社屋が現在の場所に移った今も「建設の日」は続いており、全員総出でペンキ塗り、コンクリート塗り、周辺整備を行っている。

■敷地の半分は斜面で、そこに草が生える。そこを草刈機で刈るのが近年の「建設の日」の仕事になっていたが、「ガソリンをまき散らして草を刈るのは『地球益の追求』にならない。山羊を飼って草を食べさせてはどうか」と誰かがいい出し、斜面に山羊小屋を建て、つがいの山羊を飼育している。おかげで草刈作業がなくなり、山羊からは乳が採れ、窓から見える2頭が草を食べるのどかな光景が、仕事に疲れたときの癒やしになっている。

■「建設の日」には、新入社員が「棟梁」を勤めることになっており、その棟梁の指示には上司も澤入社長も従わねばならないというルールがある。棟梁が許可を出さない限り休憩もできない。若い人に人を使う訓練させる場でもあるのだ。

取材先 サワーコーポレーション(tanbouki 048
取材 2007/08/05
掲載 ポジティブ2007/10
本文 sawacorporation.pdf へのリンク 
 

 
↑「建設の日」の休憩所づくりと山羊の乳搾り
 
 【120714】経営計画を社員に決めさせる  


■牛タン専門チェーン店、ねぎしフードサービスの根岸榮治社長は、その昔、喫茶店、ファミリーレストラン、ラーメン店など業態の異なる店舗を広範な地域に展開していた。いずれの店も評判がよく行列ができるほどだったが、遠隔地に展開していたことと店ごとに業態が異なったために管理が行きとどかず、従業員の不正を誘発したり、同業他社に従業員を引き抜かれたりした。
 

■その反省から、20店近い店舗を閉鎖し、その後、業態を牛タン専門店に絞り込み、現在28の店舗を新宿から30分圏内に集約。従業員とのコミュニケーションを密にし、ビジョンを共有し、自分たちで考えさせ、自分たちで決めさせる経営を展開している。 具体的には次の通りである。

@働く仲間の幸せと顧客満足による高い評価をみんなでめざす「ビューティフルカンパニー」を宣言した。
A店長と本社スタッフで「店長SO会議」を開催。この場で経営計画と社内ルールを決定する。
B全社員による「改革改善全体会議」を月1回開催。各店代表が改革改善事例を発表する。
C「お客様においしさと真心を届ける。お客様に喜びを自分の喜びとする…」との経営理念を掲げ、朝礼・夕礼で唱和。自分の考えや体験を順番に発表。それを文章化し「私と経営理念」と題した冊子にまとめている。

取材先 ねぎしフードサービス
取材  2011/09/21
掲載  リーダーシップ2011/11
本文  
negishi.pdf へのリンク
 
 
↑店長SO会議(左)と改革改善全体会議(右)
 
【120715】外国人旅行者のおもてなしを従業員に工夫させる   


■外国人旅行客にターゲットを絞って国際化戦略を打ち出した道頓堀ホテルは、「世界中の人たちに日本を好きになってもらうこと」を目標に掲げ、おもてなしの具体的な方法はすべて従業員にまかせている。

■必要なコストは誰でも1件について20万円までの決済権を与えており、従業員は自分たちで工夫して、その範囲の中で、デコ&ネイルの体験イベント、にぎり寿司、餅つき、たこ焼きなどの日本食文化体験、浴衣着物体験などを展開している。

取材先 王宮・道頓堀ホテル
取材 2015/08/11
掲載 リーダーシップ2015/10
本文 dotonborihotel.pdf

←宿泊客のクリスマス会 
 
【120716】外国人を信じて任せる   


■栄鋳造所(東京都八王子市)の鈴木隆史社長は、最初に採用したミャンマー人ン難民の男性にこう言った。「ミャンマーは何年か後に民主化されるだろう。それまでに、ここで鋳造の技術を勉強するといい。そして、民主化されて帰国できるようになったら、君はミャンマーで鋳造会社を立ち上げるのだ。僕がそれを応援する」かれはこれを聞いて感激のあまり泣き出した。

■鈴木さんは、外国人を単にワーカーと見ずに、彼らが帰国して鋳造会社を立ち上げてくれれば、日本にいながら外国との太いパイプがつくれると考えていた。

■韓国の大学からインターンシップでやってきて同社で働いた韓国人男性は、今年3月に韓国で「栄Korea」という会社を立ち上げることになっている。

■政治難民として日本にやってきたカメルーン人の場合は、母国に帰る見通しが立たないため、同社の正社員になり母国に残した娘を呼び寄せたいと考えている。

■日本人の多くは外国人を日本人で足りない部分を補うマンパワーとして島見ていないが、鈴木さんは一人ひとりを見つめ、信頼して任せていきたいという。それが彼らに「この会社のためなら」という気にさせ、この会社の未来を開いていくことなる。

取材先 栄鋳造所
取材 2016/02/09
掲載 リーダーシップ2016/04
本文 sakae.pdf へのリンク 

 
↑全社員の集合写真(左)と英語の作業マニュアル
 
【120717】業績再位置主義から従業員第一主義に転換する    


■最先端の美容技術を身に着けて米国留学から帰国した久保華図八さんの下に、大勢の若者が弟子入りした。久保さんは彼らを雇い入れ、美容室「バグジー」を運営した。壁に個人別実績グラフを貼って売り上げを競わせ、自分自身はきらびやかなファッションを身にまとい、高級外車を乗り回して、こんな生活がしたかったら、しっかり稼げとハッパをかけた。

■しかし、「売上、売上」と攻め立てられることに耐えられなくなった社員が辞めていき、その人数が従業員の半数に及んだとき、店が回らなくなり、店舗拡大のために注ぎ込んだ膨大な負債が返せなくなった。

■このままでは倒産する。そうなれば自殺するしかないと思いつめた久保さんは、ある人から、次のような話を聞いた。

■西郷南洲は「子孫のための美田を買わず」という言葉を残している。西郷は自分のために働く人ではなかった。もしそんなことをしたら、どうぞ自分のもとを去ってくれと西郷はいった。人が辞めていく会社は、辞めていく社員ではなく、リーダーに問題があるのだとその人は説いた。

■撃たれるような思いで、この言葉を聞いた久保さんは、「自分の至らなさのために大勢を辞めさてしまい、君たちにも大変な思いをさせた」と残った社員の前で頭を下げた。社員たちは「社長がやり直そうというなら、僕らはついていきます」と言ってくれ、以来、久保さんは売り上げや利益よりも働く人の幸せを第一に考える経営に方向転換した。

@みんなで休日返上で働き、借り入れ金を返済しながら、余裕が生まれたら少しずつ休日を増やしていき、週休2日制を実現した。
A売上と利益をベースにした成果主義賃金を改め、年功賃金をベースに業績給を加味した賃金制度に切り替えた。
B評価の重点を会社への貢献よりも個人の成長に置いた。
C従来トップダウンで決めていた売上目標と利益目標を自己申告による個人目標の積み上げ方式に改めた。
D各店責任者を、自己成長率の高いもの、人望のあるもの、人の面倒を見るのが好きなものの中から選び、各店責任者で構成する幹部会で、採用・配置・賃金・出店計画を決定。それに久保さんがアドバイスする形に改めた。
E美容師として独立するのに必要な知識技術を習得させるためのキャリアプランと教育訓練マニュアルを作成、入社後15年間ですべてを教える教育訓練体制を作った。

取材先 九州壹組
取材 2019/01/10
掲載先 リーダーシップ2019/03
本文 bagzy.pdf へのリンク 

 ←バグジーの教育訓練
 
【120718】部下の提案をフォローする    


■提案制度をつくって提案箱を置いておけば、社員が次々と提案を投投函してくれるわけではない。提案活動は上から下、下から上への2ウエイコミュニケーションである。いい提案が出てくるためには、管理監督者から次のような働きかけが必要である。

@みんなで改善提案活動をやろうという方針を示す。
A改善の目の付け所、提案の書き方を教える。
B提案に単なる苦情や意見が書かれているときは、その苦情や意見をきき、必要な処置を行い、提案には解決策が書かれていることが必要なことを指導する。
Cいつも同じレベルにとどまっている提案者には、どうアドバイスすればもっと伸びてくれるかを考えて、アドバイスする。
D優れた提案は、みんなにその内容を知らせ、みんなの前で褒め、表彰する。

出所 「改善提案ハンドブック」(日本HR協会 1980 

 
 
【120719】社員の仕事をフォローする     


■徳武産業が介護シューズ「あゆみシリーズ」を開発した1995年、同社ははじめて赤字を経験した。十河孝男社長と副社長のヒロ子夫人は開発に没頭し、既存製品のOEM生産と管理を3人の社員に任せていたのだが、経験不足のためマネジメントが十分でなかったことが原因だった。

■十河さんはそのとき彼らをきつく叱ってしまい、その後3人が辞めてしまったことをずっと後悔している。赤字の責任は彼らではなく、社長である自分にあった。自分がもっと気を配ってフォローすべきだった…と。

■その反省から、現在では、経営計画の発表と同時に「私の挑戦」と題して前期の反省と今期の目標を発表させ、それを逐一フォローしている。また、賞与を渡すときは、十河さんが1人ひとりに宛てた自筆の手紙で、今期頑張ったところを具体的に褒め、来期への期待を記している。

取材先 徳武産業
取材 2019/02/08
掲載先 リーダーシップ2019/04
本文 tokutake.pdf へのリンク 

 ←本社工場の縫製職場
 
【120720】「社員が1番」と宣言する   
 

■島根電工(株)の荒木恭司社長は「社員が1番、取引先が2番、お客様が3番、地域が4番、株主が5番」と社内外に宣言している。

■お客様からの支持を集めるには会社への信頼感を高める必要があり、そのためには社員1人ひとりがお客様から信頼されねばならず、そのためには何よりも会社が社員を大切にすることだと考えたからである。

■この考え方に沿って、育児休業制度、こども看護休暇制度、誕生日休暇制度、週3日のノー残業デーなどを実施。プレミアムフライデーには14000円の支援金を配布し1500以降同僚・友人・家族と過ごすことを奨励、さらに、家族ぐるみ大運動会、事業所単位の社員旅行、地域への奉仕活動などを行っている。

■また、20日間に及ぶ新入社員合宿教育をはじめ、入社3年生まで、繰り返し行われる合宿研修の中で、社員1人ひとりに、何のために生きるのか、どう生きて、どう死んでいくのかを考えさせ、自己実現のために働く…ということに気づかせる教育に力を入れている。

取材先 島根電工
取材 2020/01/29
掲載先 リーダーシップ2020/03
本文 shimanedenko.pdf へのリンク 

 
電気工事作業(左)とプレミアムフライデー支援金の封筒
 
【120721】非行少年少女たちを信じて任せる    


■非行歴のある少年少女たちを積極的に雇用してきた北九州市のガソリンスタンド、野口石油の野口義弘社長は、非行少年は不幸少年だという。普通の子供たちが親の愛情をたっぷり受けて育つのに対して、彼等はそれが受けられなかったために非行に走った。だから、こちらが愛情をもって接し、「大丈夫だよ」とハグしてやれば必ず心を開いてくれると野口さんは言う。

■彼らに求めるルールは「嘘をつかない」「お金をごまかさない」の2つだけ。1日に終わりに当番で作業日誌を書かせ、売上金を確認させ、銀行のATMまで持っていかせ、入金させる。お金を自分のポケットに入れる者がいないとは言えないが、それよりもこちらから、お前を信頼しているという姿勢を見せることが大切だと野口さんは言う。現金と伝票が合わなければ全員で徹底的に探す。お金をごまかしたらどうなるかをみんなと一緒に見ることで、これはごかませないな…とみんなが思うようになるという。

取材先 野口石油
取材 2020/03/03
掲載先 リーダーシップ2020/05
本文 noguchi.pdf へのリンク

 
片野給油所の従業員(左)と歴代忘年会の写真
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