絵で見る創意くふう事典  》 第12章 組織  》 F改善活動を展開する
 
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組織‐1207 F改善活動を展開する BACKNEXT

改善活動は提案活動とQCサークルなど小集団活動から成り立っており、命じられている仕事の範囲をこえて気付いたことを提案し、許可を得て自主的に改善実施する活動で、広い意味での経営参画活動と言えます。以下、そのその具体例を集めました。

 このページの掲載事例→                   ●120701 提案活動を推進する  
 ●120702 DIO活動で生産改革をめざす 
 ●120703 小集団活動で保育の質を高める
 ●120704 改善活動でデザート部門を黒字化する  
 ●120705 セル生産に向けて改善活動を展開する
 ●120706 5S運動で社員の力を結集する
 ●120707 小集団活動を復活しモジュール化を推進する
 ●120708 よくみつけましたね提案制度
 
【120701】 提案活動を推進する  

提案制度は従業員の経営参画を目的に各社が戦後に導入。1970年代に入ってQC手法の現場への展開という目的が加わり,改善効果を重視するようになった。以下はその当時(1973)の各社提案担当者による座談会の要約である。 

■住友金属工業
提案制度のスタートは1949年。1972年度の提案件数は426,232件(1人当たり13.1件)。入社時から徹底してIE教育を実施しており、考えたらすぐ提案するように呼びかけている。考える作業者でないと給料は貰えないという風土がある。質の向上が課題だが、それを強調しすぎると量が激減する。課長賞・所長賞・社長賞の3段階の表彰制度がある。賞金を個人のものにする人は少なく、職場の他社見学やレクリエーションの費用として積み立てている。 

■松下電器産業
提案制度スタートは1950年。1972年度の提案件数は785,030件(1人当たり12.4件)。「衆知を集めた全員経営」の一環として実施。提案件数は多いが、採用率は10%以下。よい提案をたくさん出すことを目標にしている。1次審査は監督者が行っており、上司と部下の対話の機会になっている。 

■日立造船
提案制度スタートは1954年。1972年度の提案件数は42,607件(1人当たり1.7件)。制度発足当初は人間関係、モラール向上に重点があったが、やがてコストダウン、アイデア開発に重点が移った。最近は「100万人の経営」の理念に基づいて全員参画経営の一環として推進している。現場ではQCサークル、ZDグループによるグループ提案が中心。何でもいいから出してみろ、それそれ、それでいいんだ…という調子でまず出させるように仕向けている。 

■日本生命保険
提案制度のスタートは1952年。1972年度の提案件数は1,655件(1人当たり0..12件)。統一した執務基準によって事務処理を行っているので、現場での工夫改善の余地は小さいが、その中で「アイデアをまとめてハワイへ行こう」と訴えて、事務効率化をめざした提案を募集している。

■トヨタ自動車工業
提案制度のスタートは1951年。1972年度の提案件数は168,500件(1人当たり4.2件)。工場ごとに委員会を作って推進。年2回全社で課題提案を実施するほか、工場単位でも自主的に課題提案を実施している。仕事の主人公マインド、考える習慣づくり、誇りを持って提案できる社会性を訴えている。 

取材先 提案制度プロモーション研究座談会
取材 1973/05/14
掲載 日本HR協会編 人と経営1973/07
本文 teianzadankai.pdf へのリンク
  

 
 
【120702】 DIO活動で生産改革をめざす   


■島津製作所は分析計測機器、医用機器、航空機器などを開発製造している。社員の大半が技術系で、製造オペレーションは協力会社にアウトソーシングされ、製造担当者は品質管理・納期管理を行うだけだった。

1985年、市場や環境変化にいち早く対応するために、自主的な改善活動の必要が指摘され、製造現場を持たない計測事業部でDIODo It Ourselves)活動がスタートした。事務のマニュアル化、ファイルの共有化、情報の電子化、ゴミ分別の徹底、ISO9001認証取得の条件整備…などの分野で自主的なグループ活動を展開。1995年から一部の技術系部門や営業部門まで含めて全社展開されるようになった。

■活動は次のように行われている。
@就業時間内に業務として行なう。
A職場単位に5〜6人でグループをつくり、日頃問題と思っていることをカードに書き、重要度・緊急度・予想される効果・上位方針との適合度などの項目で評価。評価点のいものをテーマに選ぶ。
Bテーマは職制の承認を得た後、現状把握・目標設定した時点で中間報告。その後、原因分析・対策立案・実施後に成果発表。このサイクルを年2回繰り返す。

2002年、同社は創業以来の赤字を計上。黒字転換と体質強化が図られ、その中でDIO活動も会社施策に沿ったテーマが選定されるようになった。従来の見込生産方式から、売れた分だけ作るPull生産方式に転換するために、生産の内製化が進んだが、そのための生産改革にDIO活動が活用され、工数低減やリードタイムタイム短縮に成果を上げている。

取材先 島津製作所(tanbouki 017)
取材 2006//9
掲載 ポジティブ2006/09
本文 asatochigi.pdf へのリンク

 DIO活動の発表会風景
 
 【120703】 小集団活動で保育の質を高める  


■至誠保育園(東京都立川市)は1949年の設立。働くお母さんたちのために子どもたちを預かってきたが、園の使命を職員たちに共有してもらい、自発的、積極的にその役割に取り組んでもらうために1992年からQCサークル活動を始めた。

■保育園のクラスは0〜2歳児は年齢別、3〜5歳児は縦割りで編成されている。当初は各クラス3人の担当職員の中から1人ずつをピックアップしていたが、後にクラスごとにサークルを編成。クラス担当職員のほか、事務職員もどこかのサークルに加わって活動することになった。

■活動は4月からスタートし、7月後半に発表会を開催。そこで保育園長が問題点や足りない部分を指摘し、指摘されたサークルはもう一工夫を重ねて8月に再度発表する。優秀サークルは日本福祉施設士会が主催する全国大会に出場する。

■これまでのテーマに「指しゃぶりをやめるには」「お箸を上手に使うには」「スプーン・フォークの持ち方」「しっかり手を洗おう」「ぶくぶくうがいできるかな」「竹馬に上手に乗るには」「挨拶ができるようになろう」「保育園の環境をしろう」などがある。

■このほかに「こどもと地域住民のスローフード」というテーマで、地域の高齢者を保育園に招き、手打ちうどんの作り方を教わったという発表や、「2歳児の地域交流」というテーマで、2歳児クラスのサークルが、子育てに悩みを持つお母さんを招いて、保育園生活を体験してもらうというのがあった。

取材先 至誠第二保育園(tanbouki 020
取材 2006/09/06
掲載 ポジティブ2006/11
本文 shiseidaini.pdf へのリンク  

 至誠第二保育園
 
 【120704】 改善活動でデザート部門を黒字化する  

■樺|屋のデザート類製造部門はプリン・ゼリー・シュークリームなどを製造している。目が回るほど忙しかったのに利益率が低かった。急ぎの注文が入ったり、発注ミスがあると生産計画が現場サイドで書き換えられ、人件費単価が高く未熟練の派遣労働を投入してコストアップを招いていたからである。

■そこで、2003年、すべての生産計画は社長が決済することにし、次のように改善した。
@生産計画を社内ネットワークで誰もが確認できるようにした。
A時々刻々の生産計画と実績を視覚化。生産計画と実績にズレが生まれれば、その理由を書き入れ、原因を探って改善した。
B5S運動を展開。職場をわかりやすく、仕事をしやすくするために、ものの置き場を決め、白線で表示、包装資材の在庫状態を見える化した。

2005年から全員参加で改善提案活動をスタートさせた。
@当初は「仕事がきつい」「作業がやりにくい」「照明を明るくしてほしい」などの不平不満が提案として出てきたが、改善プロジェクトチームで協議。プロジェクトメンバーが提案者1人ひとりを面談し、問題を改善にどう結びつけていくかを指導し、提案を書き直させて再提出させた。
A社内ネットワーク上の「カイゼン通信」のページと食堂掲示板に、提案による改善事例を掲示した。

■改善事例として次のものがある。

@エクレアの箱詰工程で印字不良を発見すると包装機を停止させるが、箱詰工程と包装機が15m離れているため、その間の商品が全て不良になっていた。そこで、箱詰工程と包装機を12mにまで近づけ、不良の発生を最小限におさえた。


Aシュークリーム用の小麦粉は篩にかけ、空気を含ませ、いくつかのシュークリームの種類に応じて所定量をドラム缶に入れる。その所定量を書いた紙が外れたり、ドラム缶の置き場が変わると間違えやすかった。そこで風袋、篩、秤、ドラムの置き場を最短距離で作業できるようにレイアウトを変更。置き場を明確に区分した。


B雑然としていた資材置き場の4Sを実施。不要なものを撤去、白線を引き直し、通路を確保、物の置き場を明確化、名称・用途を表示。最低在庫量を決め、それを切ったら、注文連絡票を書き簡易ポストに投入。資材担当者はそれを見回り、注文連絡票があれば「只今注文中」の看板を掲げて発注することをルール化した。

C商品の包装の日付が見にくい、汚れている…など、検査室で問題が見つかると、現場に連絡が入り、現場は同じ時間帯に包装した商品を全数チェックして、結果を検査室に連絡する。このとき電話だと記録が残らない。そこで、調査結果報告のフォーマットを作成。それに記入してファックスすることにした。弧の改善は後に、ISO9001の予防措置の一環として位置づけられた。

取材先 竹屋(tanbouki 024)
取材 2006/11/06
掲載 ポジティブ07/01
本文 takeya.pdf へのリンク

 竹屋工場内部
 
【120705】 セル生産に向けて改善活動を展開  

■椿本チエインは2001年に大阪市鶴見区にあった工場を京田辺市に移転。新工場は2004年から本格稼働した。その頃、世の中は必要なものを必要なときに必要なだけ購入する時代に移行しつつあり、それに対応して、それまでの大量生産方式から必要なものを必要なときに必要なだけつくるセル生産方式に切り替えを図り、そのためにバブル崩壊後休止していた改善活動を再構築した。

■改善事務局を担当する品質保証課は、社長を通じて管理監督者に改善活動への支援を呼びかけ、積極的に改善して目標や課題を達成しないとよい評価は得られないと、改善の必要性を強く訴え、1人月1件、年間12件の提案を目標に置いた。

■一般社員の改善提案活動と並行して、職制を中心とした次のようなセル生産活動を展開した。
@5Sの徹底、ものの出し入れ・運搬・段取りの無駄排除、つくりだめの悪習排除、これらの活動を組立工程から始めて、徐々に上流工程に広げていった。
A3S(整理・整頓・清掃)コンテストを開催。各班長が審査表を持って自班以外の3Sの状態に点数をつけ、上位職場を表彰する。
B期に8回、セル生産発表会を開催。
C各職場に掲示板を設置。改善事例、納期・品質・安全・改善の実績グラフを掲示。
D各職場に「朝市コーナー」のテーブルを設置。不良が出たら、ここに置き、みんなで不良を出さない方法を検討・確認する。

取材先 椿本チエイン(tanbouki 029
取材 2006/12/18
取材 ポジティブ2007/02
本文 tsubakimoto.pdf へのリンク   

 京田辺工場の改善活動板
 
【120706】 5S運動で社員の力を結集する  

■真空装置用ステンレス部品加工受託業、斉藤マシン工業(山形県天童市)は、.2005年、異業種交流団体の勉強会で「5S」のモニター工場になると手を挙げ、コンサルタントを招いて「5S」に取り組んだ。

■モデルスペースを決め、油で真っ黒になった床をきれいにする。床に張りついた油をヘラではぎとり、洗剤で洗い流し、拭き取って、ペンキ塗りし、通路とモノの置き場をわけるラインを引く。当初1年で横展開する計画だったが、これを2か月半でやり終えた。

■現在は次のような活動を行なっている。
@毎日始業前5分間と退社前に清掃、毎週水曜日の昼休み20分間の清掃、毎月11時間の窓拭きと草むしりを行なっている。
A全社員が2人ずつペアになり、1週間ごとに5Sパトロールを実施、それらの活動の結果をチェックしている。
Bパトロール結果は毎週1回の全体ミーティグで発表し、そこで提起された問題は各班のリーダーで構成する5S委員会が改善方法を検討する。例えば次のような改善事例がある。
・事務所と工場の間にあった壁を取り除いた。互いの様子が見えるようになり、コミュニケーションが活発化した。・ワークは従来パレットの上に置き、リフターで持ち上げて移動させていたが、キャスター付きの台車を作ってその上に置くことでリフターを使わず移動できるようになった。
・工場の窓際は要らないものが沢山置かれていたが、一切モノを置かず、通路とすることをルール化した。
・屋外の切粉集積場は切粉が散乱していたが、床面にペンキを塗り、切粉が落ちたら見えるようにし、発見したらすぐ掃除することにした。
・各職場に暖房用の灯油のポリタンクが置かれていたが、屋外にポリタンク置き場をつくり、そこまで入れに行くことにした。作業スペースが広がり、危険防止にも役立った。
・各職場に納期確認のためのカレンダーが貼ってあったが、バラバラで不ぞろいだった。そこでみんなでカレンダーを手作りし、そこに会社行事と、その月に誕生日を迎える社員の顔写真を貼り込んだ。

■5Sモニター工場である同社には毎月1回異業種交流会のメンバーの訪問を受ける。活動の成果を見られ、訪問客から賞賛されることが、社員に自信と誇りを与えた。2006年からTPS(トヨタ生産方式)活動が始まり、コンサルタントの指導の下で、新たな改善に取り組んでいる。

取材先 斉藤マシン工業(tanbouki 033
取材 2007/01/25
掲載 ポジティブ2007/0
本文 saitomachine.pdf へのリンク 


整理整頓された工場内
 
【120707】 小集団活動を復活し、モジュール化を推進する  


■2002
10月に長崎造船所で起きた建造中の豪華客船の火災は三菱重工全社に大きな衝撃を与えた。製造責任者を集めた現場管理改革委員会はその背景に現場の疲弊を指摘し、それに基づいて老朽設備の更新、管理スパンに適合した職場再編成、管理監督者の処遇見直しが行われた。

工作機械事業部(滋賀県栗東市)ではそれに加えて、OJTの名のもとで現場任せになっていた技能教育を改めて体系化し、長く休止してきた小集団活動を復活させ、製品のモジュール化に取り組んだ。この取り組みは大型工作機と歯車工作機械の2分野で社内のベストイノベーション賞を受賞する大きな成果を上げた。

それまでの工作機械はお客様の注文に応じて1品ずつ設計されていたが、部品を標準化してそれを組み合わせることで様々な製品を作り出し、設計工数低減、部品調達コストの低減、品質向上、納期短縮を図ったものである。

モジュール化によって組立方法は大きく変わる。新しい組立方法を確立するために最も無駄のない作業方法を探る必要があり、その過程で作業者たちの様々な改善活動が必要だった。「大きな組織で人と物とを動かすにはシステムだけでは回らない。伝統的生産技術に根差した個々の人間の力の集積が不可欠で、それが企業の競争力になる」と技師長の橋口武弘さんはいう。現場の力を結集したモジュール化による「ものづくり革新」は工作機械事業部から始まり、全社に広がりつつある。

取材先 三菱重工業工作機械事業部(tanbouki 063
取材 2008/02/18
掲載 ポジティブ2008/04
本文 mitsubishijuko.pdf へのリンク

 
工作機械事業部工場内部
 
【120708】 よくみつけましたね提案制度   

絹の精練加工専業メーカーだったセーレン(福井市)は複雑な生産工程にITを活用したジャストインタイム生産方式を導入。コンピュータが導き出した最も無駄のない生産計画の実現をはばむ問題を、ひとつひとつつぶしていく活動を展開した。

そのひとつに染色加工事業の損金をゼロにする取り組みがあった。他社から生地を預かって染色加工する事業で、加工に失敗すると生地を買い取らねばならず、欠陥が見つかって再加工した場合のコストアップも損金になる。この損金をゼロにするという課題に取り組んだ。

それまで問題発見、対策実施に責任を負っていたのは係長クラスだったが、彼らだけで損金ゼロは実現できないことがわかり「よく見つけましたね提案制度」を導入した。従来の改善提案は自分の仕事の問題を自分で改善し結果を報告するものだったが、この制度では他部門や他人の仕事の無駄を見つけて提案することが奨励される。採否の判定と改善実施は担当部門が行い、提案者はアイデアを提案するだけ。パート・派遣など非正規社員にも積極参加を呼び掛け、その提案実績は正社員登用の条件とされた。

これにより、たとえば次のような提案が出てきた。

・染色工場でインクの色違いを早期に発見した。
・原料に針金が入っているのを発見。生地にキズがつくのを防止した。
・コーティング工場で加工中のムラを発見した。そのままコーティングしてしまうと再加工ができなくなり、大きな損金が出るところだった。
・生地の裏と表を反対にして機械にかけそうになったことに気づいた。生地の納入業者が「裏」と「表」と判をついているのだが、その表示が間違っていた。もしもそのまま機械に掛けていれば大量の不良が出たはずだが、そのことに気付き大きな不良の発生を未然に防いだ。

この活動により改善の目が現場の隅々に行き渡り、損金はゼロに近づき、生産工程は滞りなく流れるようになった。

取材先 セーレンtanbouki 085
取材 2009/02/10
掲載 労政時報2009/07/10
本文 seiren.pdf へのリンク

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